更に夜が深くなり助けた女性達に洞窟の中で寝るようにジェスチャーすると特に反対される事も無く全員が洞窟の中に休息を取り始めた。
それを確認してから離れていた場所にいたイクシオーネがたき火に当たっているホシモリに近づきクロークを解除する。
急に現れたイクシオーネに大きな鳥が驚くがしばらくすると静かになった。そしてイクシオーネもたき火の近くで待機モードに入る。
「さてと人がいてどれほどの規模かは判らないが街があるなら……帰還できる可能性が増えたな」
「はい。鉄を加工できる知識はあるようなので帰還できる可能性はわずかですが上昇しました」
「衛生とか打ち上げていてくれたらいいんだがそれは無さそうだな……馬車ならぬ鳥車ってかんじだしな」
「はい。この星に来てから星空のデータを取っていますがこの惑星を回る衛星の存在は今の所確認できません」
「まぁ仕方ない。それで明日から街に向かう訳だが……相棒は俺達から100メートルほど離れてクローク機能を発動して姿を消してついてこられるか?」
「クローク機能に大きなエネルギーは使わないので問題ありません。問題があるとすればそこにいる鳥の様な生物の速度です」
「馬ぐらいじゃないか?仮に時速100キロで走られるとしたら十日でどれだけ進めるって話になるからな」
「それもそうですね。後は実際にその生物を走らせないと分かりませんね」
ホシモリがそういう事といってたき火に薪を投げ込むと火の粉が宙に舞った。
お互いにその光景を眺めているとイクシオーネがそろそろ睡眠を取る時間なので寝てくださいとホシモリに告げる。
誰かが見張りをする必要があったが自分以上に適任な相棒のイクシオーネがそう言ってくれたのでホシモリは素直に見張りを任せ睡眠を取る事にする。
眠れる時に寝ておかないといつ光弾や銃弾が飛んでくるか分からない場所にいたホシモリはすぐに眠れる特技を身につけていたのでイクシオーネに任せ眠りについた。
「おやすみなさい相棒」
洞窟にいる女性達も疲れているのかまったく洞窟から出て来ないままパチパチとたき火の音だけが時間を刻んでいく。
夜中に犬の様な生き物が群れで近くまで来るがイクシオーネがメインカメラを光らすと驚き逃げていき戦闘になる事はなく平和に朝を迎えた。
まだ暗い内にホシモリは目覚め先に礼を言ってから朝の挨拶を済まし、女性達が起きてくるまでの間、話でもしようかと考えたが洞窟の中から話し声が聞こえ出てくる気配を感じたのでイクシオーネはクローク機能を発動させ姿を消した。
そして出発するまでの間、森の中で静かに辺りを警戒し出発の時を待つ。
ホシモリは出発に備え装備を点検しイクシオーネと通信したりしているとようやく太陽が顔をだし洞窟の中から女性達が顔をだし何か言った後にホシモリに頭を下げる。
どうせ言っても通じないがおはようと言ってホシモリも挨拶を返し少し観察すると少女と中が良かった女性が剣の様な物を帯刀しており体には銀色の甲冑を装備していた。
『鉄でできた甲冑ですが未知の金属が混じっています。そのおかげで見た目以上に軽くなっているようです』
『だよな?結構厚みとかあるからあれが鉄だと全部含めると20キロ以上の重さになるから並の女にはキツいだろうなと思ってな』
『差別発言を感知。重さを感じるのに男性も女性も関係ありません』
『あーはいはい。通信にも異常が無くて安心したよ』
いつの間にか甲冑に身を包んだショートヘアーの女性が女性達のリーダーになっていた様でホシモリに近づき洞窟の中に着いて来て欲しいとジェスチャーをする。
断る理由もなかったので少し警戒しながら着いて行くと昨日の様に街まで持って行く物を決めていたのか空だった樽に色々な物が詰め込まれていた。
そしてその上にたぶん文字が書かれた大量の紙が纏められておりそれを自分が持ちたいと言った様な気がしたのでホシモリは頷きそれを女性に渡した。
どういう物かは分からなかったがホシモリに大きく頭を下げたので大事な事が書かれている様だった。
ホシモリはその女性に街まで持っていく物を尋ねるとその樽の他に食料や金品っぽい物が入った木箱を指さしたのてそれを積み上げて持ちあげる。
かなりの重量があったそれをホシモリが軽々と持ち上げたので少女と同じ言葉を発し大きく目を見開き驚いた。
『なるほど……今の言葉を翻訳するとゴリラと言っている可能性が高いです』
『高くねーよ!普通に考えて凄いって言ってるはずだぞ!』
『流石は相棒。もう翻訳に成功しましたか』
小声で何かを話しているホシモリに女性は不思議そうな顔をしながら後を追った。
洞窟の外に荷物を運び出すと繋がれていた大形の鳥、二羽に荷車と昨日男性を入れた車輪付きの牢が取り付けられていたので荷車の方にホシモリは食料や荷物を運び込み並べた。そのせいで少し狭く感じられたが女性達が座ったりするほどのスペースは確保されていたので何とかなりそうだった。
それと十日ほどかかるとの事なので薪などを纏め男性達の牢の屋根にくくりつけついでに日よけとして機能させる様にしておいた。
『なかなか起きませんが殺害したのでしょうか?』
『お前な……見て分かる事聞くなよな。首に攻撃した瞬間に電気流して色々と麻痺させたからな。二、三日は起きないと思うぞ』
『なるほど。その間は糞尿は垂れ流しですね。勘違いだった場合仲良くなるのは不可能です』
『戦場だと小便とかしてる暇ないから垂れ流しの時も多いし大丈夫だ。何かあったら作った小屋まで逃げる……せっかく作ったのに使ってねー……』
『未知の惑星ですからね。使う機会もあるかと思います。落ち着いたらワープポッドの残骸も回収したいですから』
荷車を運ぶ鳥に宝石の様な物がついた甲冑のような物がつけられていたのでイクシオーネと通信しながら見ていると装着し終わった様で先ほどの女性がやって来て出発の準備が整ったとジェスチャーする。
その事で急に思いだしたホシモリは自分はその鳥を操縦できないと伝えるとその女性は自身と他の女性を指さして鳥の顎につけられている手綱を握った。
女性達が手綱を握るとホシモリに伝わったので頷き自分は辺りを見張ると伝えるとそれも伝わったようで女性は頷いた。
そして皆が荷車に乗り込み、荷車の上はかなり丈夫にできていたのでホシモリは上に上がり全方向を見張れる様にする。
そして御者台に乗っている女性がホシモリに頷いたのでホシモリも頷くと荷馬車は少し発光し持ちあがる。
『相棒。気をつけてください魔法を感知しました』
イクシオーネの警告の後にすぐにどこからとも無く水が現れて車輪にくっつき車輪と地面の間に幕が形成されゆっくりと馬車が動き始める。
『凄いな……水で衝撃が吸収されているから振動があんまり無いな』
『二台の荷馬車に重力フィールドを感知しました。少しですが重量も軽くなっているようです』
『わかった。相棒悪いが気付かれない範囲で接近し魔法についてデータをとり続けてくれ』
『了解しました』
似た現象は体験した事はあったが、目の前の技術や現象は未知の物近かったのでホシモリは油断していた自分に活を入れ直しフード被り戦闘中の様な緊張感を身に纏い辺りを警戒する。
だがそれが災いしたのかホシモリが本気で辺りを警戒すると殺気を感じるのか鳥たちがガタガタと震え全く動かなくなり武装した女性も顔が青くなり震え始める。
『女性や生物を不用意に怖がらせる事は感心しません』
『普通に考えて護衛の時は本気で警戒するだろ!』
『八割の力で本気を出すのですホシモリ』
『お前は何で武術の師範みたいな事を言ってるんだよ!』
そんなハプニングはあったがようやく鳥たちが落ち着き動ける様になったのでホシモリはフードを取って素顔を晒し相棒の言った様に八割の力で本気を出す様に務めた。
屋根の上でダストレールガンを構えていると鳥達も慣れてきたのか少しスピードが上がった様なのでホシモリが義眼で測定すると時速11~12キロほど出ていた。
(思った以上に速いな……って事は森でこの速度だから平地だともっと速いか?)と考えていると考え事が読まれたのかイクシオーネから通信が入る。
『確かに思っている以上には速いですが休憩等も含めるので進めて一日で50キロと言った所でしょう』
『俺達みたいに夜でも見えるって訳でも無いだろうしな』
『昨夜に少し実験しましたがその鳥も鳥目の様なので夜は休息が必須かと』
『生き物だしな……それで十日位って事だから500~600キロ位の距離があるって事か』
『はい。航空機等が欲しい距離ですね』
そんな無い物ねだりをしていると手綱を握る女性達は気がついていなかったが木の隙間から空が見えそこから荷馬車と同じ大きさの鳥がこちらを餌と認識し急降下を始めた。
いちいち報告して足を止めるのも嫌だったのでホシモリはダストレールガンを構えてサイレントモードに切り替え襲いかかってきた鳥の眉間を打ち抜いた。
森の中に落下しく音で手綱を握る女性達は気がついた様だったがホシモリが大丈夫だとジェスチャーすると馬車を止めること無く走らせた。
『流石です相棒』
『初めて見る奴だったが美味かったんだろうか?基本的に鶏肉は美味いと聞くんだが……』
街についたら食べられるでしょうとイクシオーネが言ったのでホシモリはその言葉を信じて見張りを続けた。
それからは特に何かが襲ってくると言う事は無く一時間事に休憩を挟み先へと進んだ。
ホシモリが荷車の屋根で揺られながら木々の隙間から空を見ると思った以上に太陽は沈んでおり夜の時間が顔を出し始めた。
場所的にも道が広くなっておりこの辺りで本日は休息かな? とホシモリが考えていると二台の馬車はゆっくりと速度を落とした。
完全に止まると荷馬車の上にいるホシモリに向かって手綱を握る女性が手を上げたのでホシモリも同じ様に手を上げて返す。
手綱を握っていた大きな鳥を荷馬車から外し近くの木にロープで繋ぐとお腹が減っていたその辺りの植物を食べ始め、荷馬車に積んだ樽の中には水もあったのでそれを桶に入れてやると勢いよく飲み始めた。
特に寒いと言う事は無かったがたき火をつけないと真っ暗になるので牢の上にくくりつけた薪を持ってきて火をおこす準備を始める。と言っても適当に積んだ薪にヒートナイフを刺すと火がつくので特に難しい事はしていないがたき火が完成した。
荷馬車の中から各自が食料や水をとりたき火の近くに座ったのでホシモリも食料をとり少し離れた場所に座った。
『探査用のバギーぐらい揺れるかと思ったが全然揺れなかったな』
『魔法と言う物は凄いものですね』
『解析は終わったか?』
『いいえ。ある程度は終わっていますが現状は全て仮説でしか話せません。正確なデータを望むのであればもう少し時間が必要です』
『了解っと。まぁ今日一日で48,3キロほどの移動だしまだ当分は解析できるな』
皆が食事を取り終わり談笑などをしているとホシモリの元に甲冑を着て手綱を握っていた女性がやって来た。
何の様だろうとホシモリが思っていると今晩の見張りはどうするかと言う様なジェスチャーをしたのでホシモリは少し考え伝える。
本人がいうよう見張りを交代しながらする方が良かったが、彼女には荷馬車の操縦に力を入れてもらいたかったのでその提案を断り自身が見張りをすると伝えた。
少し戸惑っているような動きを見せるが彼女も疲れていたようでもしもの時はすぐに声をかけてくれと言うようなジェスチャーをして頭を下げてかたたき火の下に戻って行く。
そして更に夜も更け女性達は荷馬車の中で寝る様なので全員がそちらへと向かって行ったのでホシモリがたき火の側にいく。
たき火の側で薪をくべ背伸びなどをしていると荷馬車の中から少女が小走りにやって来てホシモリにパンを一つ渡してから少し恥ずかしそうに戻って言った。
『毒とか入ってたら笑えないよな』
『相棒は少しひねくれてますね。並の毒では相棒の強化肝臓で無効化されるので問題ありません』
実際に似た様な事あったしなーと笑いホシモリは少しパンを焼いてから口に放り込むと他のパンより少しだけ美味しい気がした。
『……ロリコン味ですか?』
『どこからそんな言葉を調べてくるんだ……と言うかちょっと待て少女とかを好きな奴をロリコンって言う訳で少女をロリコンとは言わんぞ』
『……そうでしたか。勉強になりました相棒』
そんなたわいも無い話を一人と一機は続けながら静かな夜を楽しんだ。
