ホシモリが首を鳴らしてから戦闘服のフードを被るとフルフェイスのヘルメット様に頭部を守り硬質化する。
そして背中の強化骨格とも接続され脳に調節信号を流し顔を覆ってはいるが全方位の景色が視界に映される。
「どうですか相棒。戦闘服は壊れていませんか?」
「ああ。大丈夫だ。じゃあ行って来るがもしもの時は電磁スモークで援護してくれ」
「判りました。止む得ない場合を除きその星の知的生命体を殺す事は禁じられていますので気をつけて」
「その辺はこっちは遭難中だから何とかなるな……じゃあ行って来るわ」
ホシモリが親指でグッドサインを作るとイクシオーネも同じ様に返す。
そしてホシモリがクローク機能を発動させるとホシモリの体は辺りの風景に同化する様に消えていった。
洞窟を守る様に武装した男が二人立っているがどちらもあまりやる気が無いようで片方が欠伸をするともう片方も釣られて欠伸をする。
「こんな危険な山にだれも来ねーよな。その為のアジトなんだしよ」
「だよな。まぁ給料分は働かねーとな」
「しっかし今回は上玉がおおいな。少しくらいは甘い汁を吸いたいが売った時に価値がさがるしな」
男の台詞にもう一人の男がゲスは笑みを浮かばせ笑っていると洞窟の中から別の男が現れて首輪をつけた少女を雑に扱い檻の中にいれ鍵を閉める。
おして見張り達に何もなかったかと尋ね見張りも大丈夫だと答えると洞窟の中へと戻っていく。
「もうすぐ見張りも交代だな。速く代わってくれねーかなー」
「ほんとだよな」
そう言ってたき火の近くで休憩している仲間達の方を見ると全員が横になり寝ている様だった。
今日は確かに疲れたからなと笑っていると首を絞められる感触があった瞬間に一瞬で意識を奪われた。
自分に話しかけた仲間が急に意識を失ったので慌てて近づこうとした瞬間にその男を意識を失いその場にゆっくりと崩れ落ちていく。
洞窟の外にいる男達の意識を刈り取ると先ほどまでいた場所から、辺りを索敵しているイクシオーネから通信が入る。
『外には牢に入れられた人以外は存在しません。そのまま洞窟内を制圧して問題ありません』
『何人いるか分かるか?』
『五人ですが……私達の様にクロークしている可能性もあります』
『了解。見張りが倒れた事に女達が気づいた様だからささっと仕留めてくる』
『判りました。気をつけてください』
周りと完全に同化しているホシモリは洞窟の中へと静かに入って行く。
洞窟の中は思った以上に広く罠にかかると音がなる鳴子の様な罠が所々に仕掛けてあったがホシモリは引っかからずに先を進む。
『こんな感じの昔ながらの罠って作りは単純だが凄いよな』
『はい。視界には写りますが確実に見つけようとするとそれ様にセンサー等を作らないといけませんからね』
『前の任務でも帝国軍の兵士とか鳴子とかに普通に引っかかってたからな。ハイテクになるとアナログが効くよな』
『未だに実弾兵器が使われるのはそういう所ですね。イオン兵器を無効化するシールドも実弾なら易々と貫通しますし』
『俺もボルトアクションライフルの方がよく当たるしな』
それは貴方だけです。相棒とイクシオーネが人だったら大きくため息をつき呆れている姿が想像できたホシモリは軽く笑い洞窟を調べていく。
そして奥の空間が見えて来るとそこは思ったより広く、先ほど外に出てきた男と裕福そうな服をきた男と外にいた見張りと同じ様な装備に身を包んだ音がいた。
そしてその武装した男二人が薄い金色の髪の女の子を暴れない様に押さえつけ外に出てきた男が首輪のような物を持ち、その少女に装着しようとしていた。
あれを装着するとどういう効果があるのか、別の星の自分がそこまで関わっていい物かと悩んだが猿ぐつわをはめ泣きじゃくる少女がどうしても悪くは見えなかったのでホシモリは頭を掻いてから音を一切立てずに首輪を持った男に急接近する。
そして首筋に目にも止まらない速度で正確に手刀を叩き込むと首輪を持った男は膝から崩れ落ちる。
いきなり男が崩れ落ちたのでその場にいた全員の目が点になり驚くが次の瞬間には少女を押さえつけていた二人の男が崩れ落ちた。
そして最後に残った裕福そうな男が何事だ!? と慌てるが言葉の通じないホシモリが止まるはずもなく次の瞬間には意識を失い崩れ落ちた。
『制圧完了だが……イクシオーネはそこで見張りを頼む』
『了解しました』
『こんな狭い部屋で子供といるとめっちゃ怖い……』
『ああ、SRC……star,robbed,childrenの事ですか……確かに戦いましたが……正直、私もトラウマです。13、4歳の子供とは言え戦闘力は相棒を越えていますから』
『全員保護したって話だけど何処にいてもおかしく無いしな……』
自分達をトラウマに陥れるほどの強化兵士の背丈だけがよく似た子供がいたのでホシモリはこの洞窟に入ってきた時よりも緊張しながらその部屋にかけてあったロープや鎖などを使い男達を縛っていく。
『その少女の様子はどうですか?相棒は襲われていませんか?』
『襲われてたら俺は死んでるな。猿ぐつわを自分で外して変な者を見る目でこっちを見てるな』
『……相棒。クローク機能が作動したままでは?』
そう言われ思い出すと確かに自身の体は消えているのに縄だけが気持ち悪く動き男達を縛っているというとても奇妙な状況を作っていた。
ホシモリがクローク機能を解除するとその姿が現れる。
今まで誰もいなかった場所に急に奇怪な服に身を包んだ何かが現れたの少女は小さく悲鳴を上げた後に後ずさる。
(まぁそらそうだな。戦える俺でも別の星の人間って怖いしこの子が戦えたとしても怖いわな)
ホシモリが戦闘服のフードを外すと警戒はかなりしているが人外では無いと分かり少しだけ安心しているようだった。
それからホシモリはその少女に話しかけるがやはり言葉は伝わらない様だったので、今は話をするのを諦め、外に出ようと体や手を使いジェスチャーで伝える。
それが伝わったのかその少女もジェスチャーをし自身の足に鎖がついているのでここから離れないと伝えた。
ホシモリがその鎖に触ると何処にでもあるような鉄でできた鎖だったので足かせの部分に手をかけて力の限り引っ張ると簡単に壊れ少女は自由になった。
『超振動ナイフで切断した方が楽だったのでは?』
『いや……少女がSRCだった場合……ナイフを奪われて俺の首が飛ぶ。手を取られても関節を外されるか、切断される程度で済むからな』
『ああ……確かに』
その少女はまだホシモリを警戒している様だったが、ホシモリはその少女以上に少女を警戒し気絶させた男達四人を軽々と担ぎ洞窟の外へと向かう。
勝手に着いて来るだろうとホシモリが考え先を歩くと思ったとおりにホシモリの後ろを少女は着いて来た。
ホシモリが外に出るとその姿を見て牢に入れられた女性達が少し騒がしくなる。
その騒がしいのを無視しつつホシモリは縛った男達をその辺に寝転ばせ、先に気絶させた見張りを洞窟内から持ってきたロープで縛っていく。
少女が走る気配がしたので身構え目をやると牢の中に知り合いがいたようで涙を流し再会を喜んでいた。
『……相棒が言っていた少女をスキャンしました。身長、体重、筋力量供に地球人の同じ歳の子供と比べて筋力が発達している位でSRCの可能性は低いと思われます』
『0だと言って欲しかった……5%未満って言われてたのに調査にいって全滅しかけた小隊がいたんだが?』
『確か生き残ったのはツグヒト・ホシモリ大尉という方でしたね』
二人で笑えない冗談をいいながら見張りの男達をロープで縛っていく。そして全員縛り終えた頃に何を言っているかは判らなかったが少女が少し申し訳なさそうに何かを言っていた。
その少女は檻の方を指さして言っていたので、たぶん檻を開けて欲しいんだろうと思いホシモリはそちらに移動する。
『これであの子があいつらを全員焼き殺してくださいとか言ってたら引くよな』
『引くと言うより恐ろしいですね。この場で倒しておかないと駄目な存在になりそうです』
ホシモリが牢の近くに行くと少女が錠を指さしたのでホシモリはたぶん大丈夫だろうと思い超振動ナイフを使いその錠を切断し女性達を解放する。
牢を解放すると中にいた女性達はホシモリに少し怯えながらだが外に出て自由になった事を喜んだ。
その少女の知り合いと思われる女性が話し始め話が終わるとホシモリの近くにやって来て女性の首輪を指さした。
たぶん首輪を破壊して欲しいのだろうと思いその女性に座ってもらいホシモリは先ほどと同じ様に力を込めて引きちぎった。
その光景を見て女性は驚き少女は手を叩きながら同じ言葉を何度も繰り返していた」
『言葉は分かりませんが……ゴリラ!ゴリラ!と言っていたら怒っても問題ありません』
『未知の星まで一緒に渡った相棒にゴリラとか言われたら普通キレるよな?』
首輪を壊せる事が判ったので先ほどの女性が他の女性に話しかけると全員が首筋を見せて座ったのでホシモリは一人ずつ丁寧に首輪を引きちぎっていく。
言葉が通じず女性達が着ている服よりもかなり異質な格好をしているホシモリをまだ警戒していたが全員が頭を下げて礼を言っている様だった。
そして女性達がたき火の側に集まり何かを話し合っていたのでホシモリは縛った男達を牢の中に放り込み鍵は壊してしまったのでヒートナイフを使い鉄の檻を溶かしたり切ったりして開けられない様に加工した。
それが終わる頃には女性達も話し合いが終わった様で先ほどの少女とその知り合いと思われる女性がホシモリの近くにやって来た。
そして話を始めたがやはりお互いに何を言っているか判らなかったのでホシモリは胸のポケットに入れているメモ帳をと鉛筆を取り出して何かを書き始める。
ホシモリが書いた物は人や簡単な建物が描かれており私は街へ行きたいと言う趣旨を描いて伝えた。
この方法はホシモリが言葉が伝わらない時によく使う手法で絵の上手さもあってか今までの経験上は上手くいく事が多かった。
そしてそれは今回も上手く行ったようで女性達もホシモリが描いた絵に○を描いたりジェスチャーで自分達も街へ帰りたいという様な事を伝えた。
さっそく街に向かいたかったが流石にホシモリやイクシオーネは良いとして女性達は目に見えて疲労しており森の中も夜で真っ暗だったので太陽が昇ってから出発しようと絵に描くと伝わった様で少女と仲の良い女性は頷いた。
そしてその絵に何かの記号を書き始めたがホシモリはこの星の文字も判らないので判らないというジェスチャーをすると描いた絵と今いる場所をと指さして両手を広げた。
(たぶんだが街まで十日ぐらいかかるって事だよな……ある程度はわかるがこれからの事を考えると言語取得は必須だな……知ってる星の言葉と似てるといいが……)
それから朝までは自由時間となり何処かに行きたい人がいれば好きにすれば良いと思い特にホシモリは何の指示も出さずにまた洞窟の中に入り調べ始める。
『女性達を放置して大丈夫ですか?今は私が見ていますが、皆たき火の近くで休息を取っています』
『放置して問題無いと思うぞ。自力で帰られる奴は自分の考えで動くだろうしな』
『それもそうですね』
人がいるんだから絶対にあると思いホシモリが洞窟内を調べ始めるとすぐに目的の物を発見する。
それは食料で樽のような物にぎっしりと入っておりそれが幾つもあったので数日は全員が食べ物に困る事は無さそうだった。
『この人数だと足りなくなるのは確実だから途中で何か狩って喰えばいいだろ』
『森を抜けるまで数日はかかる様ですから何かしらの食料は確保できるでしょう。それでその樽の中にある食料を食べるつもりで?』
『パンっぽいのとかあるから食えるとは思うが正直食えるか判らん。家畜の餌ならこんな所には置かんだろうし。とりあえず外に持っていって女達も腹が減ってるだろうから食べたら俺も食べる』
『それは人体実験では?』
『レディーファーストだと戦場で習ったぞ』
食料が入った樽を持ち上げて外まで運ぶとイクシオーネが言った様にたき火の近くで女性達は休憩しており誰かが減っていると言う事は無かった。
ホシモリはその食料を近くまで運び先ほどの女性にまたジェスチャーで食べられる物なら食べて良いと言う事を伝えると伝わった様で他の女性達にもその事を伝え皆がその食べ物を手に取り始める。
皆が手に取り食べ始めたのを確認してからホシモリも適当に手に取り少し離れた場所で食べ物を口にする。
『どうですか?食べられますか?』
『これはパンでこっちはチーズっぽいな。美味いかどうかと聞かれたら美味いが……刺激が足らん』
『食べ物に刺激を求めるのは間違いです。人が食べる食料である事を喜びましょう』
『そうなんだが……ささっと食べられて消化吸収がいい配給食が食べたいな』
『あの食料を好んで食べたいと言うのは連合軍の中でも相棒だけです』
『他にもいたからな!』とイクシオーネの通信中に周りに聞こえる程に声を大きくしたので少し離れた所にいた女性達のホシモリへの警戒度が少し上昇したりもした。
