プラネットレギオン 第16話 見聞

 イクシオーネに小屋の中で待機してもらいホシモリは朝早くに依頼の品を収めにハンター組合を訪れていた。

 そしてその辺に立っていた職員に声をかけて依頼品を納品する場所や持ち込んだ素材の買い取り場所を尋ねる。すると幸運な事にその二つは同じ場所にあったのでホシモリは礼を言ってからその場所へと向かう。

 長い廊下を抜け進んでいくと目的の場所はすぐに見つかった。早朝で人が少なかった事もあり受付で並ぶこともなくスムーズに職員と話ができた。

「おはようございます。本日はどういったご用件ですか?」と職員が話しかけて来たのでホシモリも朝の挨拶をしてから依頼品の納品と買い取ってもらえるかと尋ねると合っていたようで大丈夫といいホシモリに着席を促した。

 そしてホシモリの腕輪から依頼を確認し、確認が終わると依頼の品である薬草を出すように指示をする。

 言われた様にリュックサックから薬草を出すと少し驚いた様な顔をしたのでホシモリはその事を尋ねた。

「もしかして間違ってたか?」

「いえ、あってはいますが根をついたまま持って来る人は珍しかったので」

「薬草だけ採って帰って来るのもアレだから他にも色々探してたからな」

「なるほど。根がついてる物だと薬師の方で五株ほど欲しいという依頼があったと思いますのでそちらの依頼にも回していいですか?」

「もらえるお金が減らないなら文句は無いから大丈夫だ」

「では増えるので大丈夫ですね。手続きをするので少々お待ちください」

 職員が奥へと入っていきしばらく待っているとカルトンの様な物に金貨二枚と銀貨五枚を乗せて戻って来た。

 それが依頼の報酬だった様でホシモリに礼を言ってから報酬を支払った。

「ありがとうございました。それで買い取ってもらいたい物もあるとの事でしたが?」

「ああ。こっちに来たばかりである程度しか文字も読めないからここで買った図鑑に希少と書かれてあった物を取って来たから見てくれ」

 ホシモリはリュックサックの中から数種類のキノコや花や野草を等を取り出すと職員は驚き目を見開いた。

 そしてすぐに我に返りホシモリに質問する」

「ホシモリさんはまだブロンズランクでしたよね?」

「ああ。そうだぞ」

「この花が取れると言う事は……森のかなり奥の方まで行かれましたか?」

「行った行った。自然豊かな所だったからな。調子に乗って入って行ったが……もしかして不味かったか?」

「ブロンズランクでは歯が立たない生き物が多数でて来ますので……最低でももうすぐゴールドに上がる様なハンター達が行く様な場所ですね。ホシモリさんは戦闘がお得意で?」

「運が良かっただけだろ。そんなやばそうな奴はいなかったしな。基本的に襲われたら殺していいんだよな?」

「はい。自己防衛ですのでそれで大丈夫です。飼われているものや魔物使いや精霊使いが使役する物は首輪がついていますので」

 そしてホシモリが並べた花などを査定し始める。ものがいい物もあったが、新鮮さが重要な物もあり少し値が下がった物もあったが査定が終了した。

「そうですね……傷んでいる物もありますがほとんどの状態が良いので金貨二六枚でどうですか?他の所に持って行けばもう少し上がるかも知れませんが……」

「まだ言葉が通じないし今の所は価値が分からないからそれでいいが……傷んでいるやつってどれだ?」

「このライトマッシュですね。このキノコは生きている間に光を蓄える性質があるので取ってすぐに錬金術師に加工してもらうと様々な光材として使えます。日が経つごとに光量が落ちるので新鮮さが重要なんです」

「なるほどな。じゃあ帰りとかに取った方がいいか……取らなくてもいい気もするが」

「夜にならないと見つからないキノコなので無理に採取する人がいないので取って来てもらえればハンター組合は喜びますね。というか……ホシモリさんはブロンズランクで夜の森に入ったんですか?」

「ん?森に入って夜になったから森で寝た」

 ホシモリの言っている事を冗談だと思ったのか職員は笑いながら「ご冗談を」と言って冗談も含めながら並べられた草花の説明をする。

 そしてまた奥へ行き先ほど言った金額をホシモリに手渡した。

「ありがとうございました。また何かを採取された時はお持ち込みをお願いします」

「了解。……そうそう新聞みたいな情報を得る物ってこの町の何処かで買えたりするか?」

 そう尋ねるとありますと言って立ち上がり、まだ人も少ない時間だったので依頼を受ける水晶の所までホシモリを案内し、依頼を受ける時に表示されるスクリーンを出す様に頼んだ。

 ホシモリも言われた通りに操作すると目の前にスクリーンが現れたので職員が横からそれをのぞき込み右下を指さした。

「ここを押してもらうとニュースと書かれた物が出てきますのでそこを押してもらえると購入できます」

「情報的に買う価値はあるか?」

「役に立たない政治ネタかたゴシップネタまで多いですが……ハンターの皆さんは大抵の方は買いますね。危険生物が出たとか魔獣の目撃例とか季節事に住む所が変わる魔獣とかもいますから」

「なるほど」

「個人的には毎日買うより週間ニュースがオススメですね。最新のネタは追えませんがまとまって読めますし時間が余ってる時は暇つぶしもできますので」

 職員が進めてくれた週間のニュースを購入する事に決めてスクリーンを操作すると十日で銀貨四枚という値段が書かれていた。

「……これ何処で金を払うんだ?」

「銀行にお金を預けているハンターなら勝手に引いてくれますが、ない場合は部屋の隅に長方形の置物が置いてあるでしょう?あそこで支払います」

 指さされた場所をみるとちょうどハンターと思われる人物が操作をしポケットの中から銀貨を投げ入れていた。

 なるほどとホシモリは納得し同じ様に操作をするとスクリーンに購入する済みの文字が現れニュースや情報などを読めるようになった。

 そして少しく仲良くなった職員に礼を言ってからハンター組合を後にする。

 すぐにでも相棒をつれて森に入るつもりだったが文明の利器を使わずに肉を焼いて食べたり果物食べていると野人とかゴリラなどと言われるので少し市場による事にする。
 早朝でまだ人が少ない込んでない市場で塩と油などを購入しイクシオーネ連絡を入れる。

『市場にいるが何か欲しい物はあるか?』

『はい。調味料と油がいります』

 もう自分が買った物をいるといったのでそれはもう買ったと伝えると新聞の様な情報が載った物が欲しいといってきたがそれも買ったと伝えると少し悩み始める。

『何が販売されているのかを私も判断したいので義眼へのリンクを要請します』

 いいぞと言って要請を認証するとホシモリの右目で見た物が小屋にいるイクシオーネにも見えるようになった。

 いくしはこの国の文字を覚えているので露店に書かれた文字をホシモリに説明し本などが売っている所へと向かってもらう。

 その場所はすぐに見つかりそこで魔法に関する事が書かれた本を購入する。

『ありがとうございます相棒』

『他はなにかいるか?魔物とかの図鑑とかは?』

『必要ですが、お金の価値がまだ判っていない状態で使うのは得策ではありません』

『仕方ないが高い物と安い物がイマイチ分からないからな』

 本を買って小屋に戻ろうとすると石鹸や衣服を洗う洗剤が売っている店をイクシオーネが見つけたのでホシモリにその二つを購入させた。

 そして小屋で合流し鍵をかけイクシオーネはクローク機能を発動させ森へと向かった。

 そして森へと向かう道中でイクシオーネが質問をする。

「今回の依頼は何を受けましたか?」

「今回は受けてないな。依頼を受けた物より売った物の方が金額が良かったからな。受けなくても稼げるなら手間も省ける」

「ハンターのクラスを上げれば信用も上がると聞きましたが?」

「その辺りを含めてだな。相棒を誤魔化す必要もあるから住むのは王立都市か魔導工業都市の予定だからな。本当にいるならそこで上げる。レムザスの資格を取れば国から地位を保証されるって話だからハンターである必要も無いと思う」

「了解しました」

 そして二人は森の奥深くまで入っていき、動植物の生態系の調査をはじめ希少な草花があればそれを摘みリュックサックへと入れる。

 襲ってきて食べきれるサイズの獲物がいれば命を奪い食べきれないサイズだった場合はイクシオーネが威嚇したりホシモリが蹴ったり殴ったりして追っ払った。

 そんな事をしているといつの間にか夜になったので先程襲って来た耳が刃物の様によく切れるウサギをばらして調味料をつけて焼き、食べられると本に書いてあったセミの様な虫の羽を取って捨てて本体を今日買った油で二匹ほど揚げていた。

 ホシモリが調理している間にイクシオーネはその巨体に似合わずに静かに今日、購入した魔法の本を読んでいた。

「魔法に関して分かったか?」

「はい。魔法の基本は九つの属性に分かれるそうです。火・水・風・土・光・闇・大地・海・空」

「応用は?」

「時魔法・空間魔法・精霊魔法・召喚魔法といった物は例外になります」

「ほー……って事は時魔法とか使えると時間を止めたり、空間魔法とかだとサイキッカーみたいに装甲無視の空間の断裂とかしてくるのか?」

「いえ。そこまではいかないようです。少しの間、自分や他人を速くしたり遅くしたりですね。空間魔法も別の次元に物を収納できたりだそうです。初級の本なのでそこまで詳しく書かれていませんが……肉が焼けました今が食べ頃です」

 話の途中だったが肉がいい感じに焼けたのでホシモリはそれにかぶりつく。

「調味料を見つけた人、考えた人は本当に凄いな。美味い」

「それもありますが相棒が空腹というのもあります。空腹は最大の調味料とも言います」

「確かにな。腹減ってると何食っても美味いもんな」

 油で揚げていたセミの様な虫もカラッと揚がったのでホシモリは塩をかけてから口に放り込む。

「……結構美味いな。こんな感じで適当に食って美味かったからご先祖様はタコとかナマコが食えたんだろうな……地球の食材展とか言うので見せてもらったがナマコは食えるとか思わん」

「かなり過去のデータになりますが虫食も当時はかなりの批判があったようです」

「へー。今なら品種改良しまくって地球産の昆虫食とかかなりの高級品なのにな」

 肉を食べ終え残った骨をたき火の中に捨てて魔法の話をしているとイクシオーネのセンサーに小さな生体反応が浮かび上がる。

 大きさ的にも人ではなかったが警戒してイクシオーネはクローク機能を発動させて姿を消し、ホシモリも姿は消さなかったがいつでも戦える体勢を取ったが、それもホシモリ達を警戒してか近づかずに消えていった。

「生命反応が消失しました」

「……何だったんだろうな?敵意は無かったと思うから大丈夫とは思うが」

「正確な事は分かりませんが魔力の塊の様な生命に思えます」

 考えた所で今の生き物が出てくる訳でもないので気にしない事にしてホシモリは今朝かったニュースを腕輪の宝石をおしてスクリーンを開き読み始める。

「それが言っていた新聞ですか?」

「どこまで信用できるか分からないが無いよりいいだろ文字の勉強にもなるしな……まぁほとんど読めないが」

 イクシオーネは失礼しますといってホシモリの後ろに回り新聞を読み始める。

 そして二つのニュースに目がとまりそれをレーザーポインターで指した。

「ここ書かれているニュースが私が助けたハンター達の事が書かれていますね」

「ん?これか……この文字だと……空から岩が……飛んできてハンターを助けるか?」

「はい。合っています。ゴシップネタの様ですが空から巨大な岩が振ってきて窮地のハンターを助ける。神の御業か?と言う見だしですね」

「助かる命なら助かって良かったな」

「はい。あの辺りには滅多に現れない魔獣だったそうなので油断していたと書かれています」

「ハンターランクは?」

「シルバーですがもうすぐゴールドに上がるパーティーだった様です」

「お手柄だな。相棒」

「ありがとうございます」

 そして他の記事を読み進めるよホシモリが捕まえた人攫いの事なども詳細に書かれており、都市の警備兵が部下を泳がせ一人の死者も出さずに確保したと言う事が書かれ、助かった女性達の証言もあり捕まった貴族は二ヶ月後に王都で処刑が決まったと書かれていた。

「これだけ技術が発達してるのに人を売って奴隷にするって凄い星だよな」

「はい。人やレムザスより強い生物がいるのも一つの原因ですね。後、魔法がある為に個人の力量に差がつき格差が生じやすいの遠因と思われます」

「戦えれば楽に稼げるが……戦えない人もいるしな」

「はい。良くも悪くもそれがこの星の文化です。私達は下手にかかわらずに尊重しましょう。今回は別ですが自分がまいた種で奴隷になった人もいるはずです」

「そういうのは国の偉い人が考える事だし俺達は帰る事を考えないとな」

「そういう事です」

 揺らめく炎の中でホシモリとイクシオーネは話を続け夜も更けていった。

目次