ホシモリはハンター組合で買った物を並べてイクシオーネにどういう物かの説明をしイクシオーネもそれを手に取り黙って聞いていた。
そして話し終わると自分の意見をホシモリに伝える。
「言葉の本や水晶については必要なものなので適正だとは思いますが、小屋に関しては少し割高ですね。相棒の事ですから外でも生活できるのでほとんどこの小屋を使わない気がします」
「あー……たぶんそうなるかもな。二人で森の中にいた時も生活できてたしな。まぁいいか」
「はい。払ってしまった物は仕方ないので有効活用しましょう」
「そうだな。それで言葉の本と水晶だが相棒が何度か見て確認してくれるか?」
「分かりました。水晶から出る音を録音すれば何度でも聞けますからね」
「まぁそれもあるが……相棒が覚える方が確実に速いからな。言葉を覚えるなら会話する方が速い。それで相棒が覚えたらできるだけ覚えた言葉で俺と会話だな。そうする事で俺も速く覚えられるだろ?」
「了解しました。学習用のナノマシンがあれば脳直接覚えさせられるので速いのですが無い物は仕方ありません」
「あっても使わないぞ。あれって普通のナノマシンよりデカいから使い終わってしばらくしたら小便と一緒に排泄されるがその時めっちゃ痛いからな」
「そういう物ですから仕方ありません。文字はどうしますか?私が覚えてしまえば書く時に義眼に送ってなぞる用に書く事もできますが?」
「時間はかかるが覚えるよ。覚えておかないと何かあった時に使えないからな。プラネットの操縦が分からなくて説明書を見ながら操縦するのは違うだろ?」
「分かりました。私もできる限りサポートはします」
文字や言葉も明日の朝にはイクシオーネは覚えてそうだなっと笑いしばらくは言葉や文字について意見を交換した。
そして次はハンターのランク制度についての事を話し合う為に組合から教えてもらったブロンズ・シルバー・ゴールド・ミスリル・オリハルコン・エンペライトの事を伝えた。
「ブロンズ、シルバー、ゴールドの金属は見つけました。ミスリル、オリハルコン・エンペライトは未知の金属だと思われます」
「だよな。俺も初めて聞く金属だ。このもらった腕輪も銅だしな」と言って腕輪を外しイクシオーネに渡すと中央の宝石は未知の物だったが腕輪の部分はちゃんと銅でできていた。
「問題はランク制度なんだよな……魔物とか人に危害を加える生物がいるしそういうのを討伐するのも仕事の内なんだよな。それでオリハルコン・エンペライトの人間がどれぐらいの強さってのが気になるな」
「そうですね。仮に戦う事になったても相手の強さを図れないと逃げようがありません」
「レムザスに関しても大型の魔獣を討伐するとか言ってたしな……相棒と似たような大きさの中型なら高位ランクが戦った方が強いって言ってたしな」
「だったら職員が言うように相棒が模擬戦を受けても良かったのでは?何か問題がありましたか?」
そう聞かれるとホシモリは眉間に皺を寄せて難しい顔をしてから答える。
「それも考えたんだが……こう言うのって遠回りしてでも順序よくいかないと痛い目みないか?」
「どういう事でしょうか?」
「いやな。十四か十五歳位の時にな。大金はたいて自分の身の丈に合ってない武器を買って調子に乗って喜んでたら次の戦場で使いこなせず暴発して右半身吹っ飛んだからな。それから飛ばし飛ばしでいくのって好きじゃないんだよな。それこそここは知らない星だし命の危機なんて幾つでもあるからな」
「データの照合を開始…………確認しました。よくこの怪我で生きていましたね」
「運が良かったのとクローン技術に感謝だな。そういう訳で一からゆっくりとやっていく」
「了解しました」
「でもまぁ。何処かで戦闘能力の確認とかはしないと駄目だからな。シルバーぐらいのハンターが喧嘩でも売ってこないかね」
「連合国では銃や刃物を使わない喧嘩は日常茶飯事でしたからね」
「軍人とか銃とか刃物が無くても簡単に殺せるからお互いに分かってての喧嘩だからな。刃物とか抜いたら只の殺し合いだしな」
「出会う事があればオズスベルン・ガーランドに詳細を聞いても良いと思われます。彼女もかなりの戦闘力を有しています」
「確かに歩き方とか軍人のソレだしな。魔法とかもあるし……この世界の人類の脅威度は高い」
「レギオンである相棒を倒せる人間は少ないと思いますが警戒はして損は無いでしょう」
「あのな……俺とお前でレギオンだから俺一人はそれなりだぞ」
そんな話をしながら買った図鑑などもイクシオーネに渡し買った鍋などもスキャンしてもらったが鍋は鉄製でスプーン等の食器はステンレスに近い金属でできていた。
そしてホシモリが少し気になっていた重さを感じないリュックサックをスキャンしてもらうと何かの動物の皮で作られておりリュックサックの底には小さな石が隠される様に縫い付けられていた。
「このリュック荷物を入れても重さを感じなかったが……また魔法とかそんなのか?」
「確認してみます。相棒そのリュックサックの中に荷物を入れてください」
ホシモリは出していた鍋や食器、お金の入った皮袋を入れていき持ち上げると自分で言ったように重さがほとんど感じられなかった。
イクシオーネのモノアイにはどういう理屈かがしっかりと写っていた様で、ホシモリが鞄を持つとそこに縫い付けられた石が反応し重力を軽減させる魔法が発生していると言った。
荷物が入ったまま地面に置くと魔法は発動せずにイクシオーネのモノアイには重量がしっかりと表示させられた。
「なるほどなー……重力軽減とかも魔法であるんだな」
「はい。とても凄い技術ですがそれ以上にとても危険な技術です」
「重力軽減装置は開発されてるしそこまで発達してる訳でも無いが……進む方向を間違ったらこの星が消えるな」
「はい。この星の事はこの星の人達が決める事ですが……私達が帰るまでは静かにお願いしたいです」
実際に科学力が間違った方向に進み消滅してしまった星を幾つも見てきたホシモリはこの綺麗な星がそうならない事を祈った。
そしてリュックサックの中からこの世界のお金を取り出しイクシオーネに渡した。
「銅貨は銅で金貨は金だと思うがどうだ?それが全て金なら稼いで溶かせばバッテリーの接続部を修理できると思うんだが」
イクシオーネは渡された金貨をスキャンする。
「残念ですが真鍮です」
「まじか……そんなに都合良くいくとは思ってなかったが……ショックだ」
「仮にこの金貨が金だった場合でも貨幣を加工するのはオススメしません。現地の人達が困るので」
「それもそうか……相棒の修理は当分先だな」
「はい。現状は問題ありません。まずは言葉を覚えこの星の生活に慣れましょう」
そして夜もかなり更けて来たのでホシモリは固めてあった藁の上に寝っ転がった。
「中々快適だな」
「一般人の快適にはほど遠いと思われます」
「弾が飛んでこないなら何処でも快適だ。それで明日だが暗い内には街の外に出てて依頼の薬草を探す」
「判りました」
「いくらクロークしてるとはいえ。魔法でバレるかも知れないからなら基本的に朝早くに都市を出て夜遅くに都市に入る感じだな。じゃあそんな感じでおやすみ」
「おやすみなさい相棒。もしもの時の為にクローク機能を発動させておきます」
手だけ上げてホシモリは眠りについたのでイクシオーネはクローク機能を発動させながら言葉の本を手に取り水晶で発音などの勉強を始めm数時間後にはインプットを完了させついでに買ってきていた動植物の図鑑を手に取り新しい情報を覚えていった。
そして図鑑の中に書かれた事をデータとして処理している内に夜がゆっくりと明け始めた。
少し早い様な気はしたがホシモリを起こし挨拶をすると首を鳴らしながら挨拶が帰って来る。
特に準備という準備は無かったのでリュックサックを背負い小屋に鍵をかけてから東門に向かって薄暗い街を歩く。
「相棒。朝食をとる必要があります」
「キリンゾウガメの干し肉もまだあるし森の中にいくしな。何かしら食べる物ぐらいあるだろ。相棒の事だから俺が寝てる間に文字とか覚えて図鑑とかで食べられる植物とか見てたんだろ?」
「はい。全て確認しインプットしました。少しずつでも会話にこの国の言葉を混ぜますか?」
「頼む。少しずつ慣れていかないとな」
「判りました。朝の挨拶は◇◇◇◇です」
「◇◇△◇であってるか?」
「少し発音は違いますが合っています」
勉強をしながら東門に向かって歩くと小屋から東門までの距離は思った以上に近かったのですぐ辿り着いた。
そしてそのまま通り抜けようとしたが門を守っていた門兵に少し呼び止められた。
「おはようございます。こんな朝早くに外へ出るのですか?」
こちらの東門も北門と同じ言葉が通じるのでホシモリは安心しその兵士に愛想良く答える。
「ああ。この街に来たばかりで昨日、ハンターとか言うのになったからな。人が増える前にさっさと移動しようとおもってね」
ホシモリがそう言うとその兵士は上から下まで何度か視線を動かした後に分かりました。お気をつけてと道を譲ってくれたのでホシモリも礼を言ってから門を通った。
東門を抜けると北門の様に見晴らしが良い草原地帯ではなく、すこし離れた所に崖や森などが見える様な場所だった。
「探せば草原地帯にも薬草はあると行ってたが森の中の方が多く取れるって話だ」
「はい。図鑑にもそう書かれていました。どういう植物なのかも記憶してありますので見つけ次第伝えます」
「助かる。任せたぞ」
「はい。任されました」
言葉の勉強をしながら草原地帯を抜け森に入る頃は太陽も顔を出し森の中も明るくなっていた。
森の少し奥に入り辺りに人やレムザスの気配が無い事を確認してからイクシオーネはクローク機能を解除しその姿を現す。
そしてホシモリの背では届かない所に実っていた果実を取り朝食ですと言って手渡した。
「皮ごと食べる事が可能ですが果肉だけを食べた方が美味しいとの事です」
言われた通りに紫色の少し毒々しい皮をむくと中からは豊富な水分と少しだけ黄みがかった果肉が現れホシモリはそれにかぶりつき食べ始める。
食べ終わったのを見計らってイクシオーネがどうですか? と尋ねる。
「美味いな。食感は宇宙蜂の幼虫の食感に似てるな」
「相棒に食レポは無理ですね」
「兵士に何を期待してるんだって話になるぞ」
その果実は栄養価も高かったのでホシモリはそれを朝食としてあと二個ほど食べてから依頼の品を探し始めた。
「……薬草って言うが毒消し草とかも薬草の一種だよな?薬になる草だし」
「それを言い出したら毒は分量で薬になるので毒草も薬草の一種です」
足元の草を調べたがどれも似た様な物しか無かったのでホシモリは腕につけた腕輪の宝石を押し込んで受けた依頼を再確認する。
宙に現れたスクリーンはイクシオーネにも見えた様でホシモリの背後から指示された薬草を確認する。
「◇◇◇◇◇と言う植物ですね。図鑑にも載っています。生息域は日当たりが良い水辺となっています」
「って事はこの辺を探しても無いか?」
「あると思いますが川や池などを探した方が速いですね」
イクシオーネの提案を受け森の奥へと入っていくとイクシオーネのお集音センサーに水の流れる音を拾ったのでその辺に生えてる草や花で言葉の練習をしながら歩いて行く。
そして川の近くに出たのでその近くを調べると目的の植物の群生地の様な場所があり小さな小動物や鳥達がそれを食べていた。
「少し多めに取って帰って買い取ってもらうか。アホみたいに取っても生態系に影響あるだろうしな」
「ハンターの事はよく分かりませんが私達の様な新人が安全に採取できる場所も必要ですからそれでいいと思います」
「了解。葉と茎だったから根はいらないか?」
「図鑑には根にも効果はあると書かれていましたしすぐに街に戻らないのであれば根ごと取って置く方が長持ちします」
「分かった。相棒悪いがその木の葉っぱを取ってくれるか?それに土がついた根っこごと包んでリュックサックに入れとく」
分かりました。とイクシオーネは返事を十枚ほど葉っぱをちぎりホシモリに渡す。
ホシモリはそれを受け取り薬草がちぎれないように丁寧に掘ってその葉っぱに土がついた根ごと包んで近くにあった蔦で縛りリュックサックに入れていった。
「……一時間もしない内に終わってしまった」
「正確には東門を出てから三時間と四六分の時間が流れています」
「帰るには早いし……勉強がてらにこの辺り一帯を調べるか」
「はい。それでいいと思います」
食べられる物や危険な物が図鑑を読み分かる様になった事で一人と一機はワクワクしながら森の中を楽しみ街に戻ったのはそれから三日後の夜だった……