プラネットレギオン 第14話 街中

 ホシモリが職員さんを待っているとイクシオーネから通信が入る。

『相棒。今は大丈夫ですか?』

『どうした?』

『はい。少しだけ離れた所で小規模な戦闘が発生していますので偵察に向かっていいですか?』

『魔法の事も気になるからな。分かった。相手にバレない様に調べて来てくれるか?』

『ありがとうございます。では少し行ってきます』

 気をつけてとイクシオーネに言ったタイミングで職員が戻ってき、その手には分厚い本とソヌトボール程の大きさの水晶が握られていた。

「お待たせしましたホシモリさん」

「全然待ってないから大丈夫だが……その本にのってるのか?」

「はい。この国に字や単語などが乗っています。そしてこちらの水晶には発音などが登録され言葉が通じる魔法を応用して作っていますので他国の方にも言葉が覚えやすくなっています」

 ホシモリが凄いなと感動していると職員は苦笑いをしながら本だけならまだしも水晶がかなり高く構造上の都合で十回ぐらい使うと見られなくと話した。

 だが高かろうが言葉を覚える事の優先事項はとても高かったのでホシモリはそれを購入すると決めていた。

「いくらになるんだ?」

「本だけですと金貨十枚ですが水晶込みだと金貨三十五枚になります」

「よし。高いか安いか分からない内に買っとけば問題ないな。悪いがそれをもらえるか?」

「え?いいんですか?使い切りですし確実に覚えられる保証はありませんよ?」

「大丈夫大丈夫。ダメだったらここに怒鳴り込みにくるから」

「そういうの多いので本当にやめてください」

 少し世間話をした後に金貨を払って本と水晶を購入した。

 おおかた聞きたい事を聞き終えたのでホシモリは依頼を受けられる水晶の所に行こうととすると少し待ってくださいと職員に呼び止められ地図を出して欲しいと頼まれる。

 断る理由も無かったので地図を広げると書き込んで良いかと聞かれたのでホシモリは頷いた。

「買っていただいたお礼と言う訳ではありませんがハンターの方々に役立ちそうな場所を記しておきます」

「ありがとう。助かる」

「剣の絵を描かれた所は武器が売っている店で、盾は防具です。本は図書館で葉の絵は薬などが売っている所です」

「なるほど。パンの絵は飯を食べる所か?」

「はい。ベッドの絵は寝泊まりができる所になります。他にもいろいろな施設はありますが自分で見つけるのも一つの楽しみだと思いますのでこれぐらいにしておきます。後、ハンターは血の気の多い人が多いので喧嘩はいいですが殺しはダメです。例外として決闘はありですが……」

 決闘に関しては関係なさそうだったので適当に流して聞くと人としての最低限を守っていれば捕まる事はないようだった。

 最後長い間付き合ってくれた職員に礼を言ってから金貨が入った革袋に地図と水晶を入れて依頼の確認へと向かった。

 巨大な六方晶の水晶に近づきさっきと同じように銅の腕輪の宝石を押すと半透明なスクリーンが現れ、そこにはブロンズランクのホシモリが受けられる依頼が大量に乗っていた。

(どういう原理なんだろうな?ここに書かれた字も俺が読める様になってるし)

 等と考えながら依頼を見ていくと猫を探して欲しいや下水道の掃除や花を摘んで来て欲しいなど様々な依頼がスクリーンに表示されそれに手を上や下に動かすとまた別の依頼が現れた。

 そんな依頼の中でホシモリの目についたのは薬草の採取という依頼でハンター組合がいつでも買い取るという依頼で薬草の絵が依頼表の下に描かれておりその依頼を受諾する。

 いくつでも受けられる様だったがものの試し言う事でその依頼だけ決めた。そしてハンター組合の建物から外に出ようとすると売店の様な所にこの辺り動物図鑑と植物図鑑が売っていたのでその二つを金貨六枚で購入した。

 その図鑑もハンター組合の建物の中では読めたが外に出ると全く読む事ができなかった。

 ホシモリは地図を広げイクシオーネが入れる大きさの小屋を借りる為に地図を取り出し丸をつけてもらった場所に向かって歩き始めるとイクシオーネから通信が入った。

『相棒。今は大丈夫ですか?』

『どうした?』

『先程から観察していた人達が予期しない生物の強襲に合っています。このままでは全滅の可能性が高いです』

『バレずに助けられそうか?』

『はい。足下にちょうど良い石があるのでそれを投げて当てられる事ができれば可能です』

『戦争をしてる訳でも無いしな。助かる命なら助けていいか……やってくれ』

 了解しましたという言葉の後に地面から石を抜き取る音がした後に距離や風速を調べ風を斬る音がホシモリにも届いた。

 投げた後にすぐイクシオーネも移動したようでしばらくしてから鳥の様な生物の頭に直撃したという説明が届いた。

『石が飛んで来た方角を気にしていますので私の存在には感知していないようです』

『助けた事より最新鋭のクローク機能がバレる方が問題だしな』

『大問題です。では私は引き続き調査を進めます』

『了解』

 イクシオーネとの会話が終わる頃には目的の建物が見えたのでホシモリは袋から紹介状と地図を取り出し中へと入っていく。

 中に入ると数人の人達がおりホシモリを見るとたぶん本日のご用件は? と言うような感じで言葉を発し近づいて来た。

 言葉が分からない事をジェスチャーで伝え紹介状を見せると少し鼻で笑われた様な仕草をした後に地図と小屋の間取りなどが乗せられた用紙を本棚から取り出し並べた。

 言葉は分からなかったの建物配置やイクシオーネができるだけバレずに都市内に入られる場所など確認するとホシモリが通った門は北にあり東や西にも少しだけ小さな門が書かれていた。

 そして東門の近くに観音開きの様な小屋があったのでそこの資料を見せてもらうと分かったのは小屋の作りと広さだけだったが書かれた見取り図でイクシオーネが待機できる大きさと判断しその場所を借りることにした。

 対応してくれた男が指で1を作った後に2と0を作ったので一ヶ月の家賃が金貨二十枚だと思ったのでホシモリはその額を支払った。

(間違ってたら間違ってたで文句言ってくるだろし速く言葉を覚えないとな)と考えていると男は笑顔で奥に行きその小屋の物であろう鍵をホシモリに渡した。

 その小屋の位置は先程の地図で確認できたので自分の地図に丸で目印をつけてからホシモリは東門の近くにある小屋へと向かった。

 少し迷いながら一時間ほど歩くとその小屋を見つけたので近づくと渡された鍵と小屋につけられていた錠がほんのりと光った。

 そして鍵穴に鍵を入れて回すと合っていた様で鍵は開いた。

 扉を少し開けて中に入ると中は思った以上に綺麗に掃除されており小屋の端には桶や樽や鍬などが置かれており乾いた藁の様な植物も四角くまとめ積まれていた。

 その小屋を少し調べると足下に穴が空いた場所もあったので柵などで家畜でも飼育していたのかとホシモリは考えた。

「どんな物件を紹介されるかと思ったが……なかなかいい所だな。雨風しのげて外から光を取り込める窓もあるし相棒も入られるしな。何より町中だから襲撃される心配がそんなにない」

 兵士であるホシモリが一般人の感覚とはかけ離れ喜んでいると相棒のイクシオーネからまた通信が入った。

『魔法に関する調査が一通り終わりました』

『了解。こちらも相棒が入られる大きさの拠点を借りられた。俺のいる座標は分かるか?』

『確認しました。私から見ている門の近くです。クローク機能を使い都市内に侵入を試みますか?』

『いや……もう少しで日が沈むからな。それからにしよう暗くなれば人も減るだろうからな』

『了解しました。日が沈み人が減るまで待機しておきます』

『俺は暗くなるまで少し町を見てくる』

 小屋にもう一度鍵をかけ町中へと繰り出した。先程のように何か目的があってという訳ではないのでゆっくりと町を見て回る。

 馬車などが通る道はレムザスも通るようで道幅は広くコンクリートや石畳とはまた違う作り方で舗装されており思った以上に強度があるようだった。

 そして舗装路には街灯も備えつけてありランプの様な作りで中には石のような物が入っていた。

 建物は木や石を基調とし作られており屋根は薄く加工されたレンガの様な物で作られ鮮やかな赤色もあれば建物合わせた白や黒といった物があった。

 知らない世界の知らない街に戸惑う事も多いが銃弾が飛び交ったり殺戮兵器が跳梁跋扈するような星でもないので、ホシモリは心穏やかに景色を楽しんだ。

 目的もなく町中を歩いていると商業地区の出た様で店舗の前に様々な商品が並べられていた。

 今の所必要な物はあったが生きる為に必要な物は無かったのでどういう物が売っているのかを品定めを始めた。

 まったく意味の分からない物も多かったが鍋やフォークやスプーンといった物は分かったのでそれらを数点ほど購入する事に決め言葉は通じなかったが金貨を支払った。

 するとお釣りで銀貨が数枚と銅貨が手元に帰ってきた。

(……これ金貨だけならまだしも銀貨とか銅貨が貯まってくると邪魔な重さになるな……銀行とかあるのか?)

 そんな事を考えていると近くに鞄やリュック等が売っている店があったので買った物や採取した物を入れる為にその店へと入った。

 そこは確かに鞄などが売っていたが容量に対して書かれた金貨の枚数がおかしい店だった。

 ホシモリが良さそうに思えた大容量のリュックサックが金貨一枚に対し掌にのせられる小さな小物入れが金貨五百枚と書かれていた。

 店主にジェスチャーしたり絵を描いて意思疎通を図ったが小さな鞄にも物が大量に入るという事が分かったがどういう物かまでは分からなかったのでホシモリは金貨一枚のリュックサックを購入した。

(これぐらいなら山にでも行ってなんか狩って皮で作ってもよかったが手間を考えると良い買い物をしたな)

 買った物や袋に入った金貨などを詰め込み背負うと不思議な事に背中のリュックサックからは重さをほとんど感じられなかった。

 その事に疑問を覚えるがそろそろ暗くなり始めたのでホシモリは借りた小屋へと向かった。
 小屋に着く頃には街灯がつき始め、小屋の辺りの人は少し減り始めていたので鍵を開け扉を大きく開け放つ。

 すると大きな物がホシモリの近くを通った気配を感じたのでホシモリは小屋の扉を閉めて中から鍵をかける。

 すると後ろからホシモリに話しかける声がする。

「相棒。ここにはベッドなどが存在しません。生活の基盤を整える場所には適していません」

「どう考えても適してるだろ。雨風はしのげるし、相棒も十分待機できる広さもあるんだぞ?しかも足下が土だから振動とかキャッチできるし音とかも通るから襲撃される前になんとかできるしな」

 変な所で頑固で言っても聞かない事はイクシオーネが一番分かっていたので説得は無理だとすぐに諦める。そしてすぐに切り替え自分の為にこの小屋を借りてくれた相棒に礼を言った。

「ありがとうございます相棒」

「どういたしまして。それで?魔法の解析はできたか?」

「はい。私が助けた人達の中に魔法を使える者がいたのでデータの解析が進み。完了しました」

「了解。じゃあ俺の方もハンター組合であった事や買った物を出すから情報交換だな」

「判りました」

 先にホシモリの義眼からイクシオーネにデータを送りながら買った物を並べ、その後にイクシオーネが映したハンター達の戦闘の映像等をホシモリの義眼に映した。

「まずは魔法からだな。サイキッカー達と同じ様な物か?」

「はい。似ているだけですね。サイキッカー達は力を使う時は自分達だけで完結しますが……魔法を使う人達は空気中の未知の物質を取り込み体内で練り上げ言葉に乗せて魔法を発生させています。わかりやすい様に魔法を使う人を魔法使い。空気中の未知の物質を魔素、それを練り上げられた物を魔力としましょう」

「その方がわかりやすいな。魔法使いの戦闘データを映せるか?」

「大丈夫です。魔素の流れと魔力の流れに色をつけて表示させます」

 ホシモリの義眼に魔法使いが人より少し大きな恐竜の様な生物と戦っている所がうつされ、魔法使いが何かを話し始めると空気と一緒に魔素が口から取り込まれる。そして体の中を血液と同じ様に循環し魔素から魔力へ色が代わり体を覆った。

 そして何かを唱え終わるとその魔力が熱を持ち火球に代わり小型の恐竜に向かって飛んでいった。

「なるほどな……確かにサイキッカーに似てるが別物だな」

 他の魔法も存在しますといってホシモリに映像を送ると水の玉が飛んで行ったり風がその生き物の皮膚を切り裂いたりしていた。

 そして映像は切り替わりその生物が石で潰された近くで別の魔法使いが魔法を使い仲間の傷を癒やしていた。

 火や水が攻撃を仕掛けるのはホシモリにも経験が多くあったのであまり驚きはしなかったが怪我が癒やされていくのはあまり経験がなかったのでその映像を食い入る様に見つめた。

「治る時はお互いの魔力が混ざるように治るのか……凄いな」

「山で敵対した生物も魔法を使ってきたのでこの世界の生物は魔素を取り込み魔力に変換できると思って良いでしょう。鉱物に関しても少しですが魔力を保有する物も見つけました」

 そう言って小石の様な物を足元に並べホシモリが手に取って観察すると何処にでもある石の様だった。

「って事は仮に戦闘になったら魔法使いは喉か肺を潰したら無効化できるか?まぁその辺が弱点だし対策はしてるか。治せる魔法もあるんだしな」

「はい。何らかの対策はあると思われます。ですが魔素を口から取り込んでいるので時間稼ぎにはなると思います。何処までの怪我が治るかは不明ですが」

「頭を潰されても治る星人とかいるしな……魔法についてももっと調べないとな」

 魔法への警戒を高めそればかり話している訳にもいかないので次はホシモリがハンター組合であった事や買った物の事の話を始める

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