急に相手の言っている言葉が分かったのでホシモリは慌てて質問をする。
「急に言葉が分かる様になったが……どういう事なんだ?」
ホシモリもいつもイクシオーネと話している言葉で話しても目の前にいる甲冑で武装した男には伝わっていたようで満足そうに頷いてから答える。
「そうですね。簡単に説明するとこの部屋にはお互いが言葉を理解できる魔法が掛かっているので私も貴方も言葉を理解できる様になっています」
なるほどとはすぐには言えなかったがホシモリが連合軍の中で出会ったサイキッカーと呼ばれる超能力者集団の中には人の考えている者がいたりしたので、サイコキネシスも魔法も似ているという言葉を思いだした。
まずは話を聞いて自分なりに納得し分からない事があればその都度聞けば良いと思い話を続けてもらった。
「魔法って物は便利なんだな」
「貴方のいた国にもあるとは思いますが?」
「似た様なのはあったな。魔法とは言ってなかったら少し戸惑っただけ」
そうですかと頷いて男はホシモリにどこから来たのか、何をしているのかを聞かれる
どこから来たのかと尋ねられて遠くの星からと言った所で相手にも迷惑が掛かると考え、特に出身地などはなく旅人で当てもなく旅をしている事を伝えた。
「なるほど……それでこの町にいらしたと?」
「いや。来る用事は無かったが悪人面の男達に女達が捕まっている様に見えたからとりあえず助けておいた。言葉は分からなかったからどっちが悪人かは知らん」
「それでしたら自身の勘を信じて正解です。貴方が捕まえた連中は遠くの国に女性や子供を売り払う人さらいでしたので」
「それはよかった……あんまり考えず牢屋にぶち込んだから凄い事になってただろ?」
鼻を摘まみながらホシモリがそう言うと目の前の男も笑い鼻を摘まんで部下にやらせているので大丈夫ですと言って取り調べは続く。
そして話は続き男はこの街の自警団の様な物でホシモリの装備を見せて欲しいと言った。
街に入るのに危険物の持ち込みは無いなと思いダストレールガン、超振動ナイフ、ヒートナイフを机の上に並べる。
そしてその男が装備を調べようとすると奥の部屋から甲冑が擦れ合う音が聞こえ、失礼すると言ってから薄い青掛かった銀色の髪の女性が部屋に入ってきた。
その女性は少し前までホシモリと行動を共にした甲冑をきた女生と同じ様な鎧を着ており、その甲冑には純白のマントがついており美しい銀色の髪には長く腰まであった。
その女性は机にあったホシモリの装備に少し目を向けホシモリを取り調べていた男が敬礼をする。
そしてホシモリを上から下まで眺めいた後に話を始める。
「まずは礼を言わせて貰おう。私の部下を助けてくれてありがとう。私はオズスベルン・ガーランドと言う君は?」
「ツグヒト・ホシモリだ。名が先で姓が後だ」
「分かった。この国と同じだな」
「それで部下って言うのは……あの鳥の手綱を握ってくれた茶髪の姉ちゃんか?」
「ああその子だ。約一年前に入隊した娘だ」
「それでお偉いさんって感じだが……俺に何か用事か?」
「ふむ。どうしてお偉いさんだと思う?」
「そこの兄ちゃんが敬礼しているし手綱娘を部下って言ってるしな」
「それもそうか。他国の人間に役職をいった所で仕方ないが……形だけだがこの都市の警備隊のトップの様な役職だ」
「お偉いさんか……話し方とか変えた方がいいか?」
「どうしてそう思う?」
「権力者には逆らうなってお偉いさから習った事があるからな」
「いい名言だな。私も意識するようにしよう」
オズスベルン・ガーランドと名乗った女性はお堅い性格をしてそうな感じだったが話して見るとそうでも無いようでホシモリとガーランドの会話を隣で聞いていた男性も時折笑っていた。
確認できた訳ではないが自称、警備隊のトップが素性のよく分からない者の前に現れたのでホシモリはその事を尋ねると隠そうともせずに手柄を譲って欲しいと言ってきた。
「いきなり素性も分からない奴にそれを言うのか?」
「素性が分からないからだよ。君が捕まえたうんこ……失礼。ゴミの中に裕福そうな奴がいただろう?」
「いたいた。あの太っちょな」
「豚かデブでいい。あいつだがこの街に住んでいる貴族だ。他国やこの国の中枢にも顔が利く奴でね。なにかやらかしても金や顔の広さで全ての悪事を有耶無耶にしてきた奴だ」
「何処にでもそういう奴っているな」
「かなり広い所まで顔が知れ渡っているからな。捕まえように捕まえられなかった所を君が捕まえてくれたと言う訳だ。共犯や被害者を含めてね」
「あいつを知っていたら報復とかそういうのが怖いから誰も捕まえないってことか」
「金をばらまき口封じする事もあるな。それであの豚の息の根を確実に止める為に私達に手柄を譲って欲しいと言う訳だ。君がこの街で困っている事があれば私達もできる範囲で協力させてもらうし悪い話にはならないと約束しよう」
ガーランドの提案にホシモリは考える時間をもらいメリット、デメリットも考えたが……初めて来た星でこの提案を受けて手に入るメリットに比べれば断る事によって生まれるデメリットは些細な事だったのでその提案を受ける事にする。
「分かった。その提案を受けさせてもらうが……初めてきた街で聞きたい事が山の様にあるからそれを答えてもらっていいか?」
「分かった。だが先にもう一度礼を言わせてくれ」と言って自身の提案を受けてくれた事に足してガーランドはホシモリに丁寧に頭を下げて礼をいった。
そしてホシモリに事情聴取をしていた男性に命令をだしこの事を知っている部下達に口止め胃をするように走られた。
「ホシモリさんありがとうございました。では私はこれで失礼します」
「なんか仕事を増やしたみたいですまんな」
「いえいえ、忙しいのは今だけですよ元凶が捕まったのでそのうち暇になりますよ。失礼」
そう言ってホシモリとガーランドに頭を下げてその男は消えていった。
ガーランドが近くにあった瓶からコップに葉っぱを入れ何かを唱えるとコップに水が入りゆっくりと沸騰し部屋に紅茶ににた甘い匂いが広がった。
「今のも魔法とかいうやつか?」
「ああ。簡単な魔法だがな。君の国には魔法はないのか?」
「似た様なのはあるが……まぁ戦争用だな」
「今の魔法も相手の血液を沸騰させる魔法として開発され一般人にも使える様に改良された物だからな。それで何が聞きたい?」
「それであの太っちょだが……かなりの権力者だが報復とかは大丈夫なのか?しばらくはこの街にいる予定だから俺は巻き込まれたくないんだが……」
「原因を作った奴がいう台詞では無いが大丈夫だ。魔法で強制的に話させその後で私が責任を持って首を刎ねる。それに被害者も生きているからなその人達の記憶も読ませてもらえれば確実だ。死者の記憶は読めないからこうなってしまった訳だが……」
「なるほど……」
「後はそうだな……部下のリセム……君で言う手綱娘や商家娘のベルナ・トルキャット達から聞いた話になるが君が盗賊達を制圧した時は姿が全く見えなかった様だからな。それも利用させてもらう」
「……俺という異国の目立つ人間をデコイとして使い実は警備団が静かに片付けたとかそんなのか?」
「そんな感じだ。見えない君と見える君を両方を使わせてもらう」
「まぁ……何かあったら逃げるし問題無いか」
「問題は出さないから安心してくれ。後、この都市に入る時は本来なら厳しい審査があるがそれらを免除し入国しても問題無い様にしておく」
「自分で言うのもなんだが結構胡散臭いが大丈夫か?」
「うんこくさい豚よりマシだろう?人を見る目はあまり無いのでな悪さはしてくれるなよ。簡単な問題ならもみ消してやるが」
権力も持っていてそれなりに融通が利き部下からの信頼もありそうな逆らうと絶対に面倒くさい事になるのが確実な女性が目の前にいるので大丈夫と考え人さらいの事はガーランドに任せる事にしても他に重要な事を尋ねる。
「俺も人を見る目は無いからな頼んだぞガーランドさん。それで聞きたいんだが、街の外とかにいたあのデカい人型兵器はなんだ?」
「君の国には無いのか。あれはレムザスという兵器だな。細かくは言わないが大昔に石で動くゴーレムという石人形が作られていてな。それ対大型の魔獣用に改良進化させたものだ」
「へー。中に人とか乗れるのか?」
「いや乗れないな。人の言葉に反応し命令を聞くだけの兵器だ。この国には大型の魔獣が出現するからそれを倒したり運んだりする物だな」
「なるほど。それで周りが見晴らしの良い草原地帯か」
「ああ。小型のレムザスもいるが……人ぐらいの大きさになると腕の立つものが戦った方が強いからな。荷物を運んだりするのには向いているが戦闘には向かないな」
「それで森の中で人攫いがいたのか……レムザスとか言うのが森が苦手か」
「ああ。基本的に視界が悪い場所はレムザスは苦手だからな、やられたよ。あそこの森は危険度がかなり高いくよほどの事が無い限り人は近寄らないからな」
「レムザスはこの都市で製造とかしてるのか?工場とかあるんだったら見てみたいんだが……」
「いや製造は少し特殊らしいからな。魔導工業都市ハイテンというやっている。ここでできるのは整備と修理や改造ぐらいだな」
後でイクシオーネに今話しているデータを送り意見を聞く事になると思うが、ホシモリの中で次の目的地は魔導工業都市ハイテンに決まった。
「それでレムザスとか言うのは俺でも変えるのか?」
「ふっ、君も男だな。知り合いの男の子も欲しいと良く言っている。外にいるよな大型は国が管理する兵器という扱いだから一般人に買えないが……その半分の大きさの中型、更に小型となると頑張れば買える値段だ。商人や貴族などは荷物を運んだり護衛に持っていたりもする」
「稼ぐか……」
「最後まで聞いた方がいい。大型ほどの危険性は無いが中型小型のギアレムでも一般人からすれば只の脅威だからな。王立都市までいって国家資格を取る必要がある」
「まじか……兵器だもんな」
「そういう事だ。難しいがこの国で暮らしていくなら取って置くと国が身分を保障してくれるから便利だぞ」
レムザスの事や魔法の事も聞きたい事は多いにあったが、それ以外にも聞く事は沢山あったのでホシモリは他の事を質問する。
「この場所以外でも言葉って通じるのか?」
「ハンター組合は通じるが……基本的には通じないな。有効範囲はあるからここを出て橋の下ぐらいまでは通じるはずだ」
「なるほど……この言葉が通じる装置は買えたりするのか?言葉が通じないのは少し不便だからな」
「かなり不便だとは思うが……まぁいいか。この国ならではの魔法技術だからな。残念ながら売ってない。頭に直接言葉を覚えさせる魔術書があるが……かなり値が張るから本を買って覚えた方がいい」
「頭に直接ってのが怖いな……今の話したハンター組合ってなんだ?」
「君に言おうと思っていたが……金を稼ぐ場所だな。簡単に言えば何でも屋だ。街の人からの依頼を受けて草花を採取をしたり魔獣を倒したりとかだな」
「へー」
「素材の買い取りとかもやってくれる。商人とかに持ち込んでもいいが買いたたかれる事を考えると少しは安いが安定して買い取ってくれる」
「確かに何でも屋だな」
「常に人手が不足してるみたいだからな他国の人間が依頼を受けられる様に言葉が通じる様になっているぞ」
「じゃあまずはそこに行って見るか」
「それがいい。後で街の地図を用意させよう」
それからしばらく話を続けていると思った以上に時間が経っていた様で先ほどの男が戻って来てガーランドに耳打ちをする。
その内容を聞こうと思えば聞けたが特に悪い感じの雰囲気では無かったので終わるまで待っているとガーランドがホシモリに尋ねる。
「良かったな。君が捕まえた人さらいの中に賞金首がいたようだ」
「喜びそうになったが……手柄はガーネットさん達に譲るって事だろ?もらえなく無いか?」
「それぐらいの融通は利くさ。後で地図と一緒に持ってこさせるが金貨150枚だ」
「多いか少ないのか分からないんだが?」
「使って覚えてくれ。この街の経済が潤う」
その部下にガーランドが地図と賞金を持ってくる様に命令し話を続ける。
「後は……君がシルバーランスウルフを倒したという話だが……毛皮や角はどうする?」
「……あーあの色の変わる角付き狼か?」
「それの事だ。希少という程もないが群れとなると一般の兵士ではキツい相手だからな。毛皮や角は高く売れる」
「んーバラしたのは女達だし俺は捨てて行く気満々だったしな……女達で分ける様に伝えてくれるか?運転代や料理代って事にしといて欲しい」
「わかった。人攫い達の所から持って帰った証拠の品はどうする?しばらくの間は預かり調べるから手元に来るのは時間はかかると思うが」
「いつまでこの街にいるかは分からないからそれも女達で分ける様にしてくれ。ガーランドさんやさっきの兄ちゃんも欲しいのがあったら取ってもいいぞ」
ホシモリの言い方が面白かったのかガーランドは笑い了解したと伝える。
ホシモリも目の前の笑顔が似合う美人とまだ話していたかったがかなりの時間はなしていたので、聞きたい事はある程度聞いたのでもう聞きたい事は大丈夫だと伝えた。
そしてそのタイミングで先ほどの兵士が金貨とこの町の地図を持って来てくれて地図にはハンター組合の位置に丸が売ってあった。
その事に礼を言い部屋からでようとするとガーネットに呼び止められた。
「ん?女性達に会っていかなくていいのか?君と話したい者は多いと思うぞ?まだ取り調べ中だから少し時間はかかるが……」
「寝床の確保と食い扶持にありつきたいからな。俺は先に行かしてもらうわ。適当によろしくって伝えといていくれ」
「分かった。ツグヒト・ホシモリ。今回の事は本当に恩にきる。何かあった時はこのオズスベルン・ガーランドを頼ってくれ。あと街中で銃を携帯する場合はこの魔封じの札を貼っておいてくれ」
レムザスと言う兵器もあるぐらいだし銃ぐらいあるかと考え、たぶん構造が違うから撃てるぞ? 等と余計な事は言わずにその変な模様が描かれた札をダストレールガンに貼り付ける
そしてホシモリは礼を言ってから扉を開けて部屋から出ると少し太陽は傾いていたがまだまだ明るく、目印をつけてもらったハンター組合へと向かった。
『そっちはどうだ?相棒』
『未知の金属を多数使われていますが兵器としては初代プラネットに劣ります』
『なるほどな……相棒の意見が聞きたいデータを送るから見てくれ』
『了解しました。こちらもこの兵器のデータを送ります。確認してください』