第6話  村の薬屋さん

 まだ少し静かな村の中を二人はゆっくりと並んで歩く。

「ルーちゃん行きたい所とかある?そこまで大きい村じゃないけど、それなりには色々あるよー」

「定番の冒険者ギルドはあるのかのう?」

「……何の定番かは知らないけど、村にはないねー。中央都市までいったらあるんだけどね。ルーちゃんは冒険者さんになりたいの?」

「不思議したくて、冒険したくて、ウズウズしてるんじゃが、別に冒険者にはならんでええかのう。必要とメリットがあればするんじゃがな」

「えっ?じゃあなんで冒険者ギルドに行きたいの?」

「美人な受付嬢を見たいのと冒険者に絡まれたいのじゃ!」

「そっそれって必要あるの?」

「そうじゃな……必要あるか?と言われたら無いし。必要ないと言われたらまったく無いのう」

「じゃあ、行かなくていいんじゃ……」

 二人で雑談をしながら目的もなく村の中を歩いて行く。

「冒険者ギルドは無いけどここはハンターさんの詰所だね」

 軒下には弓や矢等が立て掛けてあり有事の際にはすぐに行動できるように手入れがしてあった。

「村に獣とか魔物が入り込んできたら倒してくれるんだよ。何も無い時はお父さんみたいに家の事したり山に狩り行ったり畑を耕したりしてるよー」

 なるほどにゃ~と言いながら日向ぼっこしてる猫の顎をかいてまた別の場所に移動する。

 次に向かったのは店の前に葉っぱや根っこが吊るしてあり中には数々の草花が並んでいる場所だった。

「?……お花屋さんか?」

「違うよ、お薬屋さんだね~」

「ああ、ミーナちゃんかい……いらっしゃい」

 店の中から声が少し枯れ背の曲がった魔女を思わせる老婆が出てきた。

「おばあちゃん、こんにちはー。いま友達に村を案内してる所なんだよ」

「うむ!ミーナの自称友達のルディールじゃ。ご老体、少し店の中を見せてもらってよいか?」

「自称⁉自称じゃないよね?友達だよね⁉」

 そうじゃなと軽く笑い老婆の了解を得て店内を見てまわる。

「ほー色々あるんじゃな~」

「おばあちゃん、100歳を超えてて村では一番の薬屋さんなんだよ」

「ほっほっほ。村に薬屋さんがここだけって話だよ」

 孫を見るような優し気な目でミーナと話をしているのを邪魔をしては悪いと広くはない店内を色々と見てまわる。

(薬草の形もゲームの時とは少し違うんじゃな……薬は、歯痛……胃痛……咳止めもあるんじゃな、先ほどから村の中も色々みたが文化のレベルはかなり高いのう。科学のかわりに魔法で発展してるんじゃろうな)

 ルディールの元いた世界に比べると劣る所もあるが魔法のおかげで生活水準は高い。

(ちょろっと見かけたが畑を耕す時も牛に強化魔法かけて耕しておったし……たぶん耕運機より早かったのっぽいしのう)

「ルーちゃんどうしたの?解らない事があったらおばあちゃんに聞くといいよ」

 いつの間にか考えこんで固まっていたルディールを心配して声がかけられ我に返る。

「ふむ。薬師殿。何点か質問があるんじゃがよいかのう?」

「ええよ。私で解る事なら答えてあげるよ」

 そういって椅子に腰掛けてルディールの質問に答えてくれる。

「この国にポーションはあるかのう?」

「あるよ。私の店じゃ金貨1枚で売ってるね。大きい街とか王都だともう少し安いかもね」

「ポーションはこれで合っておるか?」

 店の店主に確認してもらうためアイテムバックからポーションを取り出し渡す。

「ここまで精巧な入れ物は見た事がないけどこの薄い緑色が出ていたらポーションだね。ミーナちゃん、すまないけど奥から一つ取ってきてくれないかい?」

「わかったよ」

「ころぶでないぞ?」

 こんな所で転ぶわけないよ~と奥に行き戻って来た時に躓き盛大に空を舞う。

「やはりじゃのう………グラビトロン!」

 小さくため息をつき重力魔法を発動し空を飛ぶ友人を顔面からダイブするのと目的のポーションが割れるのを防ぐ

「わっわっわ!うっ浮いてる!……これ?どうなってるの……?」

 どうなってるんじゃろな、と一言いい。ミーナをゆっくり降ろしポーションを手に取り老婆の方を見ると驚いた顔をしてルディールを見ていた。

「重力魔法……ミーナちゃんの友達は宮廷魔導士とかかい?」

「迷子の魔法使いじゃな!今の魔法で面倒事に巻き込まれそうなら黙っていてくれると助かるのう」

「ルーちゃん…迷子の魔法使いって気に入ってるの?あと面倒事って?」

「面倒事と言うのはな…ミーナにアレコレ聞かれることじゃな」

 ひどっ!と抗議の声をあげるミーナを無視して老婆の方を見ると少し笑ってから頷き、またポーション等について教えてくれた。

「ポーションって言うのは作り方が独特でね、作る途中でその色になるんだよ。見分ける時は色で見分けるといい。ポーションはこの色、毒消し薬はこの色ってね。あと色の綺麗さで品質がわかるね」

「なるほどの~。適当に薬とかまぜて色付けしてこの色にしたらどうなるんじゃ?」

「できなくはないだろうけど、手間と信用を無くしてまでするメリットはないし、そんな物を流通させたらまず捕まるね」

 確かにのうと納得しながらさらに質問していく。

「回復魔法とポーション系のアイテムはどこまで違うんじゃろか?」

「一緒じゃないの?違うの?」

「似てるように見えるけど少しちがうよ。そうだね~」

 老婆はすこし考えてから答える。

「回復魔法は傷をふさぎ、ポーションは血や肉を作るという感じだね」

「なるほどの~」

「ルーちゃんあれだね。わかったふりをしてるんだね!」

「違うわい!お主と一緒にするでないわ!」

 ルディールは老婆と自分の考えを答え合わせするようにそしてミーナに解るように話し出す。

「要は大怪我して血がブッシャーと出たら回復魔法で怪我だけ治しても血が足らずに死ぬし。体や手足に風穴が空いたらポーション飲んでもすぐには治らずおだぶつと言う事じゃろ?」

「だいたいそれでおおとるよ。上位の回復魔法やポーションになってくると話は違うんだけどね」

「ルーちゃん。なんで知ってるの?」

「お主に借りた本に似たような事が書いてあったぞ?」

「……うん。私も知ってたよ?本当だよ?」

 などと雑談しながらもゲーム世界の回復の違いについてたずねていく。

「ポーションと薬草に違いはあったりするんじゃろか?」

「大きな違いは無いんだけど、速効性か遅効性と体への負担の違いだね。ポーションの方が早く治るけど体に負担がかかり。薬草の方はゆっくり治すけど体に負担が少ない」

「なるほどの~」

「生き物に近ければ近いほど体への負担は少ないと覚えておくぐらいでいいよ」

「へぇ~そうなんだー」

 ミーナもルディールも感心したようにうなずく。

「なんでお主が知らんのじゃ…」

「なんでって言われても…そういう物って思って使ってるからかな?」

「まぁ…そうじゃな。そういうもんじゃな」

 車に乗っているからといって車の構造がわかるものではないしのう。などと妙にミーナの言葉に納得してしまうルディールだった。

「他に聞きたい事はあるかい?」

「そうじゃのう……ポーションに致死量はあるのかのう?」

 その言葉を聞いた老婆は少し驚き笑いながら答えてくれた。

「ほっほっほ。面白い事を聞くね。そうだね……人によって違いはあるだろうけど、一気に30本も飲めば間違いないね。上位のポーションになればさらに少なくなるね」

「はいはーい!ちしりょうって何?」

 ミーナは手を挙げて質問する。

「口にしたら死ぬ量の事じゃな。大体の食べ物にあるぞ。」

「えっ本当に?回復のお薬なのに?」

「よく言われる事だけどね。薬もね見方を変えると毒なんだよ」

「それじゃポーションとか怖くて飲めなくない?」

「用法、用量を守り正しく使えば大丈夫じゃわい」

「ほっほっほ、そういう事だよ」

 大方聞きたい事を聞き終えた二人は薬屋の店主にお礼を言い。また村の中をまわる。

「ここが小さいけど本屋さんだよ。薬草の本とか生活魔法の本とか売ってるよ~新聞もあるよ」

「くっ…おのれ。魔法書が欲しいが金が無いんじゃ!」

「早く行商さん来るといいね」

「ほんとじゃわい」

 次に武器や防具を売ってる鍛冶屋や村長さん家など色々と見てまわった頃。

「良い村じゃな」

「でしょ?ルーちゃんもここに住みなよ」

(拠点は必要じゃしテレポートのような転移魔法が使えるなら一度行けば距離なども関係ないから、それもありかもしれんのう)

「要検討じゃわい。金はないがのう…」

「村長さんに聞けば空き家を安く紹介してくれると思うよ」

「気が向いたら聞きに行くわい。今は美味しいご飯がでる宿じゃしのう」

「ははっ。お父さんのご飯美味しいもんね」

 世間話をしているとゴーン!ゴーン!と大きな鐘の音が村に響く。

「あっもうお昼だね。すぐに時間がたつね」

「あの鐘は人がおらぬようじゃが、どうやって鳴っておるんじゃ?」

 鐘の方を見ると人の姿はなく時計仕掛けのように複雑な構造はなく。なぜ鳴っているのかが不思議だった。

「ええとね。確か太陽の魔石に日の光が当たって溜まったら動くんだって。詳しくは知らないけどそういう感じの事を言ってたよ」

(ソーラーみたいな感じなのかの?)

「ルーちゃんお昼から時間あったら教えてほしい事あるんだけど…」

 とミーナが申し訳なさそうに聞いてくる。

「なんじゃい?スリーサイズか?そうじゃな上からはちじゅ…」

「いやいや!そんな事聞いてないよ!聞いてどうするの⁉」

「違うのか?ならばなんじゃ?」

 小さくため息をつきミーナが答える。

「魔法を教えてほしくて…」

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