朝起きたら知らない世界でマイキャラでした 第22話 オークションと飛空挺

 ルディールは友人の家に寄ってから村長の家に向かうので、玄関の呼び鈴を鳴らしミーナを呼んだ。

「ミーナちゃん、学校いこーー」

 と普段と違う声でミーナを呼ぶと、少しおめかしをしたミーナが出てきた。

「そうなんだけど!何かおかしくない?いつも思うんだけど、どこから声だしてるの……」

「なんじゃい、せっかく毎朝迎えに来てくれる幼馴染みを演出してやったというのに」

 などと話をして荷物を預かりアイテムバッグの中に入れていると、宿の奥からミーナの両親が出てきてルディールに、娘に付いて行ってくれてありがとうと、頭を下げていた。
 それから村長の家に向かい、バイコーンの荷馬車と共に転移魔法を使い、ルディールが借りている中央都市の倉庫に飛んだ。

「前は中央都市まで来るのが凄い大変だったのに、ルーちゃんがいるから楽になりすぎてる」

「お主も転移魔法おぼえるか?人間、一度楽を覚えるとなかなか戻れぬものじゃぞ」

「その言葉は私の耳にも痛いですね……私も楽をさせて頂いてますので、2~3日かけて中央都市に行くと考えるとね」

 それから三人で簡単な朝食をとり、村長と別れミーナと二人でオークションが開催されるイオード商会に向かった。
 イオード商会に着き受付で事情を伝えると、奥からルディールに数週間前に対応した中年の男性が出てきた。

「イオード商会へようこそ、オントさん。今日はオークション日和ですよ。そちらの方は?」

「うむ。どう説明したらええんじゃろ?普通に言えば友人じゃが、おもしろく言えば未来の大魔法使いでええんじゃろか?」

「普通でいいから!」

 ミーナの抗議を受けながら商人に簡単に説明すると、分かりました、未来の大魔法使い様ですね、今後ともイオード商会をよろしくお願いしますと言っていた。

「ルーちゃんが変な事しか言わない……」

「極まれにちゃんとした事も言うぞ」

 そのやり取りを少し笑いながら商人がオークションの会場に案内してくれた。

「オントさんとルトゥムさんも欲しいものがあれば、どうぞ参加して頂いて大丈夫ですので、ごゆっくり」

 オークションの入札方法の事など書いた用紙をルディール達に渡し、丁寧に説明してから担当の男は準備がありますのでと去っていった。
 周りを見渡すとかなり広い会場だったが、空いてるスペースはほぼ埋まっており、そこに来ている人達は貴族や商人達や村に比べてかなり裕福そうな人が大半だった。

「なにかこう、場違い感がハンパないのう」

「ルーちゃん、それこそ私の台詞だよ……私、村娘だからね」

「それを言い出したら、わらわとて今朝、畑で土いじりしておったぞ」

 オークションが一番よく見える位置で話をしていると、ステージが光り司会の男性と商品が現れてオークションが始まった。

「わっ!ルーちゃん始まったよ!」

「うむ、初めてのオークションじゃしのう、欲しいものがあったら買おうかのう」

 そう言って二人とも初めてのオークションに眼を輝かせたのだが・・・

「一言、言ってよいか?」

「…言わなくても通じるし、私もそう思ってるから大丈夫だよ」

「「高っ!」」

「高すぎぬか!?最初の方の商品でもわらわの持ち金より高いぞ!?」

「私もいいのあったら、参加してみたいな~と思ってたんだけど、額がおかしいよねって、ルーちゃんが出したのもここに出るんだよね?」

「うむ……商人が間違って連れて来た様な気がしてならないのじゃ…」

 高額商品の嵐に二人のHPは0に近づき、次の商品の紹介が始まった。

「お次の商品からは!本日の目玉のロックドラゴンの素材です!この素材は非常に状態が良く何に使うとしても重宝されるでしょう!まずは皮からです!」

 そう司会者が説明しロックドラゴンの皮が現れると周りから大きな歓声があがり競売が始まった。

「まずは金貨五百枚でどうでしょうか!」

「600!」

 その値段を聞いて二人が慌てだして競売が始まった……

 ルディールやミーナが想像してた以上の値段で皮・骨・鉱石が売れていき、二人はすでに虫の息になりながら、目玉商品のロックドラゴンの魔石×2が始まった。

「もう、おなかいっぱいなんじゃが?」

「でも一割はイオード商会さんだけど、残りは全部ルーちゃんのお金だよね?」

「普段なら踊って喜ぶが流石に、心の準備ができておらぬ」

「では、ロックドラゴンの魔石のセットは黒硬貨100枚からです!」

「110!」

 二人の叫び声と共にオークションが開始した。そして黒硬貨170枚でどこかで聞いた名前の侯爵家が競り落とした。

「他はありませんね。ではリノセス侯爵家が黒硬貨170枚で落札されました!皆様、大きな拍手を!」

 司会者の手の方を見るとダンディなイケメンのおじさんが立って手を振っていた。

「えっと、ルーちゃんあの人ってセニア様やアコット様のお父さんだよね」

「間違いなくそうじゃろな、その周りを見てみい」

 ルディールがミーナに侯爵の隣を見るように言うと、そこには先ほどまで一緒にいた村長と前に助けたセニアと妹のアコットがいて、こちらの視線に気がついた村長だけが頭を軽く下げていた。

「うわー、お金持ちすぎるね」

「わらわ的にはこちらに気づいた村長の方が驚きじゃわい」

「私的には今回の総額がルーちゃんのお財布の中に行く方が驚きなんだけど…」

「ふっふっふ、何か買ってやろうか?」

「いつも色々貰ってるからいらないって言いたいけど、王都に着いたら何か美味しい物買ってくれたら嬉しいかな?」

 その一言が、後々、大後悔するとも知らずにミーナとルディールが会話をしていると、さきほどの商人が現れて、ルディール達を応接室に案内した。

「すみませんが、ルトゥム様は隣の部屋でお待ちください。出品者様の親族以外はご遠慮させて頂いていますので」

 わかりましたと返事をしてミーナが隣の部屋に行った後に、別の商人がワゴンに金や白や黒の硬貨を積んで運んで来た。

「オント様、こちらが今回の総額になります。また何かオークションに出したい物があれば、是非イオード商会にどうぞ」

「うむ、こちらも色々と助かったのじゃありがとう」

 そう言って商人と話をしながらルディールは硬貨をアイテムバッグにしまっていると、商人の癖なのか、そのアイテムバッグなら、今回の総額の倍ぐらいでうれますよ?と言っていたが流石にこれは売れないと笑いながら答えていた。

「そうじゃ、今から王都に向かうんじゃが、王都で一番いい宿は一泊どれぐらいするもんじゃ?」

「そうですね、高い所ならいくらでもありますが、個人的におすすめは竜の顎という名前の宿ですね、最高クラスなので一泊で黒硬貨五枚いりますが」

「一見さんお断りとかはあるのかのう?」

「お泊まりになるおつもりで?」

「恥ずかしい話じゃがわらわは世間知らずじゃからのう。一度、最高を味わっておけば上が分かるからのう」

「そうですか、では私の方から予約を入れておきましょうか?」

「それはありがたい。すまぬが頼まれてくれるか?」

「分かりました。では私の方からオント様のお名前で二名で伝えておきます」

「何から何まですまぬのう」

「いえいえ大丈夫ですよ。また珍しい物が手に入ったらイオード商会に回して貰えれば」

 流石、商人じゃなと二人で笑い、隣の部屋にいるミーナと合流してイオード商会を出て、飛空挺に乗るために塔のような発着場に向かいはじめた。

「そうそう、ルーちゃん明日って泊まる所どうする?今日は飛空挺だけど」

「ん?さきほどの商人に良い所を聞いて一泊分ほど予約してもらっておいたぞ、せっかく王都まで行くんじゃし、いろいろな所に泊まってみたいしのう」

 流石はルーちゃんと値段の事も聞かずにミーナはルディールを褒めていた。

 入学祝いという事でミーナの分の飛空挺の運賃も一緒に払い二人は船にのった。

「まだこの時点でもかなりの高度じゃのう」

「いつもルーちゃんに払って貰ってごめんね」

「そういう時はありがとうと言った方が相手は喜ぶぞ。王都に行ったら山ほど欲しい物があるじゃろうから、それをみて我慢するか破産するかを楽しみにしておるぞ」

「ありがとう…どっちもしないよ!ちゃんと上手く使うよ!」

「ちなみに思い切って使うとお金のありがたみがよく分かるぞ。」

「それ、絶対に後で後悔するよね?」

 うむ!と元気よく返事をしていると、ちょうど出発の時間になった様でアナウンスが流れた後に大きな汽笛の音がなり、飛空挺が塔から離れ上昇を始めた。

 飛行機よりはかなり遅いが、飛空挺は海のフェリーの様な作りになっており、航行中も魔法で守られており風が中に入ってくることも無くかなり快適だった。

「ルーちゃん!中を見て回ろうか!」

「うむ!そうじゃな!」

 二人とも初めて乗った飛空挺に童心に戻り中を探検し始めた。飛空挺自体もかなりの大きさで中も広く、食事をする所や、カジノの様な遊ぶ所もあり、飛行中も乗客を退屈させない様な作りになっていた。

「思ったよりかなり広いのう、これだけで一日つぶせるのう」

 もうすぐ雲の中を抜けますので、抜けたらデッキから雲海をお楽しみください。とアナウンスが流れた。

「すごいね!今、雲の中って言うのも信じられないけど雲の上ってどんなのだろうね!」

 二人は雲の中を抜けてから飛空挺のデッキにあがった。そこは青と白の世界だった。

「これぞ!まさにファンタジー!なのじゃ!これだけの高度におりながら、ほぼ無風で寒さもないじゃと!しかしそのような事は無粋じゃ!」

「ルーちゃんの言ってる事はイマイチ分からないけど、飛空挺が凄いって言うのはよく分かったよ!」

 二人が子供のように騒いでいると、一人の少女がルディールに飛びついて来た。

「るーちゃん!お久しぶりです!」

 その少女は、リノセス侯爵家の次女のアコットだった。

「おお、アコットでは無いか元気にしておったか?」

 そう言って膝をおり、少女と同じ目線になって頭を撫でながら話しかけた。

「わたしは元気だったよ!るーちゃんは?」

「うむ、そこはかとなくはんなりと元気じゃ」

「えっと……アコット様がいるって事は、セニア様と侯爵様もいるのかな?」

 アコットに聞くと、お父様はまだ中央都市でお姉様と数人のメイド達と来て、部屋の中が退屈で抜け出したらルディールを見かけたと教えてくれた。

 そしてすぐにデッキに続く扉が開きアコット!と怒る声が聞こえて、セニアと数人のメイド達が姿を現した。

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