朝起きたら知らない世界でマイキャラでした 第25話 面倒事

「絶対に美味しかったはずなんだけど、味が分からなかった…」

「いや、確かに美味しかったが、お主の父親の料理のレベルが異常じゃぞ。値段と雰囲気でこちらが上の様な気もするが、同じ条件なら多分ミーナの父の勝ちじゃな」

「うへっ?さすがにそれはないんじゃないかな?確かにお父さんの料理おいしいけどね。最近、デスコさんと料理の研究してるから、また腕上がったとは言ってたけど…」

 食事を終え、部屋に戻ろうとしていると、気分が優れないのか少しふらついている、ミーナより少し年上ぐらいの女の子がいた。

「あの人、大丈夫かな?」

「大丈夫では無いじゃろうが、そこのベンチまでは行くようじゃ……」

 ルディールが言い終わる前に娘は倒れ二人は駆けより、ミーナが人を呼び、ルディールが抱え、ホテルマンに案内され医務室のような所に案内されその娘を医務室のベッドに寝かせた。
 その倒れた娘はかなりの有名人だったらしく、医務室に医者や従業員達は慌てに慌てていた。

「さっきの女の人、大丈夫かな?顔真っ青だったし、首に手みたいなアザが出てたね」

ルディールはその症状に心当たりがあり、その事をミーナに伝えた。

「多分じゃが呪い系の祈りじゃな、確か死者の呪手じゃったかな?あの手の様なアザが出るたびに、首に近づいて行き最後は絞め殺す呪いじゃな」

(ゲーム中じゃと呪神官が覚える中級の魔法で効果もしょぼいから、笑われておったが現実じゃとなかなかグロいのう)

「えっ?あの人死ぬの?」

「いや、そこまで強い呪いでは無いから神官でも連れてきて、呪解の魔法をかければ多分、治るぞ」

 すると、その話を聞いていたホテルの従業員が支配人を呼び、ルディールとミーナにその娘の診察を頼みにきた。

「お客様、立ち聞きのようで申し訳ありませんが、先ほどの女性の症状がお解りになるなら、当ホテルの治癒師と診て頂けませんか?」

「ん?わらわの様な初対面で得体の知れぬ奴に診させて良いのか?お主達の慌てようじゃと、相当の身分の娘じゃろう?」

「確かにそうですが、イオード商会様からの紹介でもありますから、ある程度以上の信用はあってご予約を受けましたので」

 診るだけじゃぞと言い、先ほどの娘が寝る部屋に案内されると、すぐに治癒師が話しかけてきた。

「すみません、この病魔がわかるんですか!?この症状は極まれにしか出ませんが、出ると確実に死ぬと言われている病なのです」

「病気では無いし、実は魔法でもないぞ。わらわがいた国での呪いじゃからこの国の物とは違うかも知れぬから、その辺も踏まえて聞いてくれると助かるぞ」

 ルディールは治癒師と支配人に、その症状と治癒の方法についてくわしく説明した。
 そして治療法に悩んでいるとその娘が目を覚ました。

「…すみません、途中から話を聞いていました、貴方の話を信じるのであれば治療は絶望的でしょうね」

「ん?起きておったか。所でお主は誰じゃ?金持ちなのはわかるが…」

「ルーちゃん凄い失礼だからね」

「わたしの名前は、リージュ。リージュ・シュラブネルです。 シュラブネル公爵の娘です。」

「公爵家で一人娘なのは分かったが、神官共に恨まれる事でもあったのか?」

 そう聞くと支配人が公爵様ですが、ローレット王国の公爵家を纏めている大公爵だと教えてくれた。その話を聞いてルディールはミーナの手を握り、では元気での!と去って行こうとしてミーナに止められた。

「ルーちゃんだめだよ!治し方が分かるなら診てあげないと!」

「大公爵じゃぞ!エ○ゲのタイトルに聞こえるが、権力の塊じゃぞ!セニアとは格が違うガチもんじゃぞ!変な事いうと真面目に首が飛ぶぞ!」

「もうすでにかなり馬鹿にしてるの伝わるし、地味にセニアさんに怒られる事いってるから!」

 逃げようとするルディールの腰にミーナがしがみつき、なんとか引き留めていると、リージュが二人にセニアと知り合いですか?と話しかけてきて、知り合いと分かれば無視する事もできずに逃げ場を失い、ルディールはおとなしくイスに座った。

「では、セニアの知り合いの魔法使いさんもう少し詳しく症状について話していただけますか?」

「くっ世間が狭いのじゃ。お主の症状はたぶん死者の呪手という呪いじゃ。先ほども少しいったが、それは魔法の様に見えるが、神官が使う祈りに近い呪いじゃ。死者の魂を生け贄にささげ祈りお主の魂に死者をくっつけておる感じじゃな」

「その全てを信用は出来ませんが、治す方法は神官に頼む以外ないのでしょうか?」

「それが一番簡単じゃな。と言っても少し話を治癒師に聞いたが、神官達と貴族は仲が悪いんじゃな…それで呪われたんじゃろ」

 仲が悪いと言うレベルでは無いですよと治癒師が教えてくれたが、ルディールが教えた治し方についてさらに頭を抱えた

「その話だと、この症状は神官達がかけて、治せるのに公表せずに隠していると言う話ですね」

「わらわがおった国の話と言う事を忘れるでないぞ?似ているだけで違う病気なんぞ多々あるじゃろ」

 それから皆で思い思いに悩んでいると、ミーナが口を開いた。

「ルーちゃんは治せないの?」

「う~む…死霊が魂にくっついておるからのう、ターンアンデッドの様な魂をあの世へ送る魔法が無いと、どうしようもないのう」

 ルディールがそう言うと真なる王の指輪が、何か忘れてませんか?と自己主張するように窓の光を反射させルディールに指輪の中に眠る指輪【王の鎮魂】の事を思い出させた。

 この指輪なら可能かもしれぬのうと、ゲーム最終日に手に入れ、皆とのラストバトルでネクロマンサーや死霊使い系のプレイヤーの超高位のアンデッド系以外を近寄っただけで成仏させ、あの世へ送り返す浄化系最上位の装備だった。その性能の為、最後なのに途中から使用禁止にされた。

 上手くいかなくても文句はいうなよ?と指輪に魔力を込めその力を解放させた、すると指輪が少し光り周りの闇を集めて、静かに眠りに誘うように、穏やかに優しくリージュを包み込み、闇が何かと一緒に静かに消えていった。
 その効果は劇的でリージュの首の手の様な痣が消え顔色も元に戻っていった。

「うむ、成功なんじゃが……素直に喜んでええんじゃろか?」

「ルーちゃん、そこは喜ばないと私も喜べないんだけど…」

 リージュは立ち上がり、体を動かしたり魔力を流したりして自分の体の状態をくまなく確かめてから、ルディールに先ほどの非礼をわび頭を下げた。

「先ほどは貴方の話を信じずにすみませんでした」

「それが当たり前じゃろ、わらわがお主の立場なら信用しておらんわい」

 リージュと少し会話をしていると、治し方が今まで分からなかった病魔の正体が分かったので治癒師が興奮気味に話しかけてきた。

「治し方が分かったのであれば、同じ症状の王妃様も!」

「そこでストップ。わらわは何もしておらぬし、そこの娘の病魔は何故か分からぬが、たまたま治ったんじゃ。うさんくさい魔法使いの話を鵜呑みにして言いふらすのはかまわんが、まだ治った事はここにおる連中以外は知らぬ事じゃぞ」

 治癒師はまだ熱が冷めていなかったが、その事を考え少し冷静になり支配人と話し合った。

「リージュじゃったか?わらわが出来るのはここまでじゃ。」

「分かりました。ですが両親には話させて頂きます」

「それは仕方がない流石に話が大きいからのう。やっちまった事は仕方ないから諦めるが、あまり巻き込むなよ?」

 リージュは少し考えてから、ある程度はと言い、この解呪の恩はいつか必ずと言っていたが。その事に対してルディールは困ったらお主の権力で助けてくれといい、話を切り上げミーナと部屋に戻った。

「これはガチで大変じゃな…」

「えっ?治って良かったんじゃないの?」

「想像の範囲でしか話せぬから、過大な解釈はしては駄目じゃぞ?神官達は貴族側と仲が悪いのも原因じゃが、力のバランスを取るのに呪ったんじゃろ。神官ならお前の娘を治してやれるぞ?の様な感じでな」

「でも、それだと神官側の悪事がバレたから神官様が捕まるんじゃないの?」

「わらわ達は王都に住んでる訳でもないし、それこそ貴族や神官に詳しい訳でもあるまい、目先の事だけなら、神官側が悪じゃが悪いのは貴族側でブレーキをかけるのにやった事かもしれんしのう。まぁ王妃がどうのこうの言っておったし、神官側がめんどくさい連中じゃろうな」

「なんていうのかな?…正しい事のためなら何をしても許されるみたいな感じなのかな?」

「そういう連中かもしれぬのう。今回の事は貴族側にはかなり強い武器になるのう、あのリージュとか言うのがノータリンで無い事を祈るしかないのう」

「ルーちゃん…ごめん私が余計な事いったばかりに…」

 謝るミーナの頭を軽く小突き、気にしすぎじゃわい、わらわが余計な事を言ってばれたんじゃし、ほっておくなど無理じゃろ?と言い大事な事を伝えた。

「ちなみに言っておくが、さっきのリージュはお主の学校の生徒会長じゃからな。お主は今後、会う事もあるぞ」

「うへっ!本当に?でも見る事はあっても、話す事はないかな~と言うか大公爵の娘さんを捕まえてノータリンとか言ってるルーちゃんの方が凄い気がしてきた」

「そうじゃろ、自分でも凄いと思うぞ。他の連中がいそうな時は余所行きモードでお話しますから、大丈夫ですよ」

「その話し方って会話の途中からでも変えられるんだ……」

「これ以上はもう想像になってしまうからのう。せっかく王都におるんじゃし、明日は何処へ行くか考えぬか?」

「私もそれがいいと思う、考えても出来る事って無いもんね」

 そういう事じゃと話を終わらせて、ホテルの売店の様な所に行き王都の地図を買い二人で何処に行くか等を話し合って夜も更けていった。

 「こう、ベッドが大きすぎて落ち着かないから眠れない…」

 「似たような事を考えておらんで寝るんじゃ」

 (しかし考えが纏まらぬ、そもそもなぜゲームの中の魔法があったんじゃ?まさかゲームの中なのか?それはありえぬな、地図も確認したが一致する地名も大陸の形もないしのう。可能性としては、わらわのようにゲームからきた奴がおるか、魔法自体が似ておるから自分たちで発明したかのどちらかじゃな…)

 それからしばらく悩んだが二人はなんとか眠りについた。

 次の日の朝を迎え朝食を取り、ルディールからミーナに提案し、すぐホテルを出ようとした所で、支配人に見つかり昨日の礼だと言われ数日は当ホテルにお泊まり頂き結構ですよ、と言われたが即座に断りホテルを出た。

「あまり楽しめなかったのう。さて問題です。ルディールさんはどうしてすぐにホテルを出たでしょうか?、ヒントはリージュが一人で居た事です」

「えっ?えっ?急に言われても…リージュ様が一人でいられるぐらい強いから離れたとか?」

「…うむ。わらわと考え方が違う所を持ってきたから正解をやろう。わらわの考えではあのホテルはシュラブネル家の傘下じゃな。それで護衛がおらんかったんじゃろ、ミーナの考え方も全然あり得るがのう。少し勿体ないがよかったじゃろ?」

「確かにもったいない気はするけど、一度経験したからもういいかな…」

 二人はそう話しながら、王都の街中へと歩みを進めた。

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